第十三話
408 名前: 1
◆3mfWSeVk8Q 投稿日: 2005/11/22(火) 04:08:39
ID:wBmJVrO30
ツン 「お父様っ!」
(;^ω^) 「先生!!」
母屋からの廊下につながるふすまを開き、ツン、そしてブーンが入ってくる
そこで、ツンとブーンの目に入ったのは、数人分の死体と
傷を負い、動けぬ先生とショボンであった
('A`) 「・・・・・よう、ブーン? ひさしぶりだぁな?」
( ^ω^) 「毒男!?」
ツン 「お父様っ!! ショボンっ!!」
声をかけられ、初めて毒男に気づいたブーン。そして、倒れる二人に駆け寄るツン
('A`) 「ま、あれだ、ちっとばっかし、遅かったってとこか?」
( ^ω^) 「・・・・・・・お前が、やったのかお・・・・?」
('A`) 「俺以外のだれがやれる?」
ツン 「・・・・・!! ふざけたことを・・・・・・!!」
409 名前: 1
◆3mfWSeVk8Q [sage] 投稿日: 2005/11/22(火) 04:09:04
ID:wBmJVrO30
先生 「ツン!! やめろっ!!」
(;^ω^) 「え・・・・・・? ツン・・・・・!!!」
先生の声に振り向くと、ツンが毒男めがけて薙刀を振り下ろそうとしていた
だが、
('A`) 「・・・くくくwまずはじょうちゃんから・・・・・!?」
('・ω・`) 「ううううわああああああああああっっっ!!!!!!!」
ツン 「・・・・!? しょ・・・ショボン!?」
毒男が、刀を抜き、ツンを切り捨てようとする寸前
ショボンが突然、立ち上がりツンを抱きとめた
('・ω・`) 「ツンさんを・・・・斬らせるもんかっ・・・・!!」
「ツンさんが、ブーンには必要なんだ・・・!!」
('A`) 「ああ、そうかよ?」
そう言って、毒男は刀を二人めがけて横薙ぎに振った
411 名前: 1
◆3mfWSeVk8Q [sage] 投稿日: 2005/11/22(火) 04:16:38
ID:wBmJVrO30
ドゴォ!! と、鈍い音と共に、二人はまとめて道場の端まで吹き飛ばさ
れる
ツンを庇うように抱きとめていたショボンの傷口が開き
二人は血で汚れる
しかし、そこに新たな刀傷は存在しない
('A`) 「・・・・ちっ、じゃまくせぇ・・・てめぇらはそこで寝てろ」
毒男の振った刀は、鞘に入ったままだった。おそらく、ショボンを殺さないためだろう
だが、そんなことは関係なかった
(#^ω^) 「お前・・・・今・・・何をしたお・・・・」
('A`) 「あん・・・・? 舞台に邪魔なゴミを掃除しただけだが・・・・?」
( ^ω^) 「・・・・・・そうかお」
ブーンの顔から表情が消えた
414 名前: 1
◆3mfWSeVk8Q [sage] 投稿日: 2005/11/22(火) 04:23:02
ID:wBmJVrO30
ずる、と腰の刀を鞘ごと引き抜き、刀を捨てる
そして、鞘を毒男に向け構える
( ^ω^) 「・・・お前も、舞台を汚すゴミになるお」
('A`) 「くくく・・・・・w いい表情しやがるぜ・・・・てめぇにできるか!?」
( ^ω^) 「ああ、やってやるお」
ブーンが、音も立てずに足を動かし、毒男の視界から消えるよう、動こうとしたその時
先生 「ブーン!!!!!!!」
「それがお前のすべき顔かああああああああああ!!!!?」
先生の怒号が響いた
その声に、ブーンの顔に表情が戻る
(;^ω^) 「せ、せんせい・・・・・・」
先生 「お前は・・・・毒男を、かわいそうとは思わないのか・・・・?」
417 名前: 1
◆3mfWSeVk8Q [sage] 投稿日: 2005/11/22(火) 04:31:45
ID:wBmJVrO30
先生の、その言葉に、一番驚いたのは、ほかならぬ毒男だった
('A`) 「・・んだと・・・・!? おっさんに哀れまれる筋合いなんざ・・!」
先生 「よく聞け、ブーン!!」
毒男を無視して、先生は怒声を上げ続ける
先生 「確かに、こいつのしていることは許されん・・・・! だがな・・・!!」
「毒男は・・・復讐にとらわれ、人生のすべて捨て去った、こいつは・・・」
「・・・・・・死に囚われていた私と・・・・一体どう違うっ!?」
「他のだれが、責めようと・・・憎もうと・・・・蔑もうと・・・・」
「お前が・・・・不殺を貫く、やさしい、優しすぎるおまえが・・・・・!!」
一呼吸
先生 「お前が救わずに、誰が救ってやれるんだっっっっっっ!!!!!」
(;^ω^) 「・・・・・・・・・!!」
先生 「俺のように・・・・毒男も救ってくれ・・・・頼むっ・・・・!」
419 名前: 1
◆3mfWSeVk8Q [sage] 投稿日: 2005/11/22(火) 04:41:41
ID:wBmJVrO30
言葉をすべて吐ききった先生は、口から吐瀉物まじりの血を吐いた
腹筋を使った大声で傷口が開いたのだろう、しかし、先生の顔は、笑みを浮かべる
('A`) 「てめぇ・・・・・いい加減にしろよ・・・・・・?」
「勝手に人を哀れむんじゃねぇよ・・・・・・・!!!」
「そん・・・・なに死にてぇんなら・・・! 今、やってやんよぉっ!!」
哀れまれた毒男は、自らの誇り、自尊心を保つために、先生に切りかかろうとした
ちょうど、ブーンたちのいるあたりから、毒男を中心に90度回転した位置にいる
先生に、毒男は、技もなにもない、ただの突きをぶち込もうとした。だが
( ^ω^) 「・・・・・させないお」
('A`) 「!?」
引き抜こうとした刀の柄尻。そこに手をおいたブーンに、邪魔された
いや、驚くべきはそこではない
ブーンの今いる位置だ
毒男は確かに、ブーンよりも先生に近い位置にいたというのに
先生の目の前に同時に到着したというのか
421 名前: 1
◆3mfWSeVk8Q [sage] 投稿日: 2005/11/22(火) 04:49:22
ID:wBmJVrO30
毒男は、後ろに飛び退き、ブーンと距離をとる
('A`) 「てめぇ・・・・・さっきの顔はどうした・・・?」
( ^ω^) 「・・・・・・? あれかお?」
いつもの顔にもどったブーンは、首をめぐらせ、殊更大きな声で尋ねた
( ^ω^) 「ツン! ショボン!! コイツに殺されたのかお!?」
ツン・('・ω・`) 「勝手に殺すな!!」
( ^ω^) 「みんな、まだ生きているお」
ブーンは笑う
( ^ω^) 「さっきは、ツンが死んだかと思ったお」
「今は、ショボンとツンが死んだかと思ったお」
「でも・・・・誰も死んでいないお。 ・・・・だったら」
ブーンは、落ちている刀を数本拾いあげ、その中から一本を選び出す
先ほどの、ナマクラ刀だ
( ^ω^) 「いくらでもやりなおせるお」
「これから・・・・毒男もやり直させる。覚悟はいいかお?」
427 名前: 1
◆3mfWSeVk8Q [sage] 投稿日: 2005/11/22(火) 05:03:51
ID:wBmJVrO30
('A`) 「・・・・・ぬりぃことを言ってんじゃねぇよっ!!」
毒男は二刀を同時に抜刀。動きを一切止めずに、竜巻の動作に入る
右足を大きくブーンへと踏み出し、身体を右に捻る
そして、渾身の力を持って、鞭の力を最大に引き出す
('A`) 「オオオオオオラアアアアアアアアアア!!!!!!!!」
キュ・・・ッゴォォオオオ!!!!!
あまりのスピードに、大気がついていけず、刀の後を音が追いかける。しかし
カツ・・・・・と軽い音を立て、ブーンはそれを峰に左手を添えた構えで受けきる
('A`) 「な・・・・・・・・・・・・・・!?」
( ^ω^) 「・・・そんな大振り、簡単に受けられるお?」
429 名前: 1
◆3mfWSeVk8Q [sage] 投稿日: 2005/11/22(火) 05:14:50
ID:wBmJVrO30
大振りとか、そんな問題ではない程のスピードであったはずだ
それに、毒男の力は、すべてが鉄製の槍を、にぎり潰すほどのものだ
人間の限界を超えたようなその膂力で振るわれる刀は
たとえ片手であっても、人体を二つ三つ両断できるほどの威力はある
万が一、そのすさまじいスピードを見切り、受けたとして
ブーンの刀も毒男の刀も、耐え切れずに折れるはずだ
それが、折れないと言うことは・・・・
('A`) (手ごたえが・・・・ない・・・・!?)
刀と刀がぶつかる瞬間に腕を伸ばしきり、均等にその力を吸収
分散させるように、腕を曲げていく。言葉にすれば、それだけだ
だが、それがどれほど難しいことか、説明はいらないであろう
('A`) 「チィッ・・・!!」
毒男は、後ろに大きく跳び、間合いを計る
ブーンを殺すには、刀で受けられない斬撃以外では、通用しそうも無い・・・・
438 名前: 1
◆3mfWSeVk8Q [sage] 投稿日: 2005/11/22(火) 05:27:56
ID:wBmJVrO30
距離をとり、二人は対峙する
毒男は、ショボンの時と同じ構え
ブーンは正眼の構えだが、その重心はずいぶんと高い
剣道のよう、と言えばわかりやすいであろう
('A`) 「イヤッ!」
毒男が右手の刀で大きく、槍投げのような形でブーンの横面を狙う
ブーンはそれを、先ほどと同じ、両手での構えで受けようとした。だが
('A`) 「二度も・・・同じ手を食うかあああああああああ!!!」
(;^ω^) 「・・・・・・・・!」
ブーンの両手がふさがっている、その時を狙い、左の刀を逆手に持ち替え
胴を薙ごうとする
ブーンはこれを後ろに跳んで回避
毒男は、その隙を逃さず、空いた右の刀で突いていく
442 名前: 1
◆3mfWSeVk8Q [sage] 投稿日: 2005/11/22(火) 05:41:22
ID:wBmJVrO30
( ^ω^) 「くっ!?」
跳んでいる間は、足を使った回避などできない
左側に掲げた刀を、下に振るい、毒男の刀を右に払う
着地し、また重心を上げた構えを取ろうとする間もなく
('A`) 「まだだぁっ!!」
( ^ω^) 「ナニィッ!?」
回転しようとする毒男の、逆手に持った左の刀がさっきの横面と同じところへ
撫ぜるような動きで迫ってくる
刀はまだ下にある。頑丈な分、重くできている刀は、すぐに上にはあがらない
ブーンは頭を後ろに逸らせ、刀の軌道から逃げる
これが順手の打ち込みだったならば、斬られていただろうが、逆手で助かる
( ^ω^) 「ハァッ!!」
('A`) 「なんのぉぉおおっっ!!」
と、同時に、ブーンは毒男の空いた右肩へと諸手突きを見舞う
だが、毒男は、大きく身をかがめ、前転をしながらこれを避けた
一進一退の攻防が続く
443 名前: 1
◆3mfWSeVk8Q [sage] 投稿日: 2005/11/22(火) 05:49:45
ID:wBmJVrO30
( ^ω^) 「オオリャアアアアアア
アァァァァァァッッッッ!!!!!」
転がり、背中を向けた毒男。突きの軌道を、下半身と上半身を捻る力で強引に曲げ
毒男の背中へと、斜めに落とす
それを見越していた毒男は、刀を交差させ、背中全体で支えるように受けとめる。しかし
メギィ!!
('A`) 「ぐぁっ・・・・!!!」
もともと刃のない刀は、受けた程度ではダメージを減じ切ることができず
毒男は、道場の床へと叩き伏せられた
( ^ω^) 「これで終わりにするおっ!!」
グォンっ!!
立ち上がれずにいる毒男、その左腕めがけて、ブーンは刀を振り下ろした
444 名前: 1
◆3mfWSeVk8Q [sage] 投稿日: 2005/11/22(火) 06:00:15
ID:wBmJVrO30
毒男は、この戦いに、忘れかけていた何かを思い出していた
('A`) (なんだ・・・・なんで・・・こんなに懐かしい・・・・?)
こんな・・・ココまでの駆け引きのある戦い、一体いつ以来だ
そうだ、十年ぶりだ・・・・
あの時は、まだシャキンと稽古をしていた
シャキンの腕は立ち、まるっきり歯が立たなかった
だから、色々と考えて、色々と手を考えて、工夫を凝らした戦いをしていた
('A`) (なんで・・・・俺はそれを・・・やめちまったんだ・・・・?)
そうだ・・・・それもやっぱり、シャキンが死んだあの年だ
右手一本で道場破りをやって・・・・負けると思ったのに、殺してもらえると思ったのに
俺は勝っちまったんだ。 全部終わらすつもりが、そこから始まっちまった・・・
('A`) (そうだった・・・・他の奴らは・・・・弱すぎた・・・・)
片手で勝てる相手に、細工も戦術も必要ない・・・・戦いがルーチンワークなっていったんだ
445 名前: 1
◆3mfWSeVk8Q [sage] 投稿日: 2005/11/22(火) 06:06:59
ID:wBmJVrO30
手に入れたラウンジの技は、状況に応じて使えば
防御も攻撃も、いっしょにこなせる
ある意味、完成しきった技だったんだ
('A`) (俺は・・・・それに頼りきっていた・・・・・)
いや、すべてを技任せなんかにしちゃいないさ
俺は、自分の身体を、極限まで鍛え抜いた。鍛えぬいた挙句が・・・
('A`) (何も考えないでも勝てちまう・・・・戦いをつまんなくしちまった・・・・)
ああ、ああ、本当に、シャキンの仇討ちなんて、口実だったんだ・・・・
俺は、おっさんに期待してたんだ
いつか、俺と楽しく殺し合いが演じられる奴を育ててくれるだろうって
だから、俺は十年もまってたんだ・・・・・・・・・・・・・今日のこの日を
447 名前: 1
◆3mfWSeVk8Q [sage] 投稿日: 2005/11/22(火) 06:16:19
ID:wBmJVrO30
('A`) 「ウワアアアアアアアアアアアア
アッッッッッッッッッ!!!!」
(;^ω^) 「なっ!?」
振り下ろされたブーンの刀は、意外なものに弾かれた
それは、キセルだった
刀よりも軽いそれは、右手の一振りで、すさまじい速度を与えられ
ブーンの刀を横殴りにしていた
キィィン!!
衝撃に耐え切れず、キセルは中央から真っ二つに割れる
その甲斐あって、刀は毒男の横へと落ちる
再び、それが振り上げられれば、こっちが負ける
毒男は、刀の上に身体を乗せ、動きを封じて立ち上がろうとする。が、
(#^ω^) 「やらせないおっ!!」
('A`) 「ガバッ!?」
刀を手放した、ブーンの拳が、毒男の鼻を叩き折った
449 名前: 1
◆3mfWSeVk8Q [sage] 投稿日: 2005/11/22(火) 06:25:45
ID:wBmJVrO30
殴られた、と気づいたときには、自分から転がっていた
ゴロゴロと、三回転したところで、毒男は素早く立ち上がる
ブーンとの距離は、十分、離れている。仕切りなおし、と、言ったところか
('A`) 「なあ、ブーン・・・・」
( ^ω^) 「なんだお?」
('A`) 「お前さんは、今、楽しいかい?」
(;^ω^) 「とんでもないお!? 早く終わらせたいお!!」
くっくっく、と毒男は笑った。折れた鼻をグヂっと直しながら
('A`) 「俺は、いつまでも、お前とこうしていてぇなぁ・・・・」
( ^ω^) 「毒男・・・・・・・」
('A`) 「だが、お前さんに振られちまったら仕方ねぇ・・・・!!!」
毒男は、刀を大きく横に広げ、構える。大鍬型の構えを
('A`) 「次で決着と、しようじゃねぇか? な?」
450 名前: 1
◆3mfWSeVk8Q [sage] 投稿日: 2005/11/22(火) 06:32:10
ID:wBmJVrO30
( ^ω^) 「毒男・・・・・・・これは、ナマクラでも人が斬れる技
だお・・・・」
毒男の本気に応えるように、ブーンは腰を落とし、刀を八双に構えた
('A`) 「はっ・・・・上等・・・・・!!」
じりじりと、お互いに間合いを詰めていく
その途中、ブーンの構えは、八双から、どんどん高くなり
ついには腕を伸ばしきった、『蜻蛉』と呼ばれる構えになった
('A`) 「とんぼ、か・・・・・・ニュー速流らしいやねw」
( ^ω^) 「そっちも・・・・・・・・オオクワガタ、だお?」
二人は笑う・・・・・馬鹿みたい笑う・・・・・・・
('A`) 「それじゃ、オオクワガタと・・・・・」
( ^ω^) 「トンボ・・・・・」
('A`)・( ^ω^) 「どちらが強いか・・・・・・・・・・・・勝負!!!」
453 名前: 1
◆3mfWSeVk8Q [sage] 投稿日: 2005/11/22(火) 06:49:28
ID:wBmJVrO30
(`・ω・') 「若様、今日から剣術を指南いたします、シャキンでご
ざいます」
('A`) 「・・・・・マンドクセ」
(`・ω・') 「若は・・・・左利きでしたか・・・・」
('A`) 「フン・・・・どうせギッチョだよ・・・・・」
(`・ω・') 「いやいや!・・・でしたら、二刀流を、やってみませんか?」
('A`) 「二刀流・・・・・・・?」
('A`) 「おい、シャキン! どうだ!? 大分、様になってきただろう?」
(`・ω・') 「ふむ・・・若にはどうやら才能があったのですかな・・・」
「これは、うちの後継ぎは、ショボンではなく、若に・・・」
('A`) 「ははは、それはいいな・・・・・・そういうのも、いいかもな・・・w」
(`・ω・') 「若! 冗談ではありませんぞ!?」
('A`) 「シャキン・・・目を覚ませよ・・・・・シャキン・・・・・」
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