第一話
30 名前: 1
投稿日: 2005/11/02(水) 20:59:46 ID:b6VzMM8jO
〜プロローグ〜
昔平和な楽園があった。
そのころ人間はとても美しい容姿をもち、野を駆ければ風よりも早く、その力は山をも砕く程だったという。
彼らは穏やかに楽園で暮らしていた。
だがある日冥界から一匹の醜い悪魔がやってきた。
悪魔は美しい人間達を憎んでいた。
悪魔は楽園を焼き払い人間達を蹂躙していった。
しかし人間達の激しい抵抗により悪魔は死んだ。
だが悪魔は死ぬ間際に人間達の力を奪い、その力を冥界に閉じこめてしまった。
以来人間は弱く脆い生き物になってしまったという・・・・。
38 名前: 1
投稿日: 2005/11/02(水) 21:06:37 ID:b6VzMM8jO
パン、と乾いた音が響きわたりそれと同時に放たれた矢のようにトラック
を2人が疾走する。
傾きかけた黄金色の日は忙しく走る二人の影を長く伸ばしていた。
不揃いな二つの足音がせわしなく、しかしリズミカルに音を立てる。
彼らはあっという間に100mを走りきりゆっくりと減速し、停止した。
はぁはぁと肩で息をする二人にストップウォッチを片手にジャージ姿の少女がパタパタと走り寄ってきた。
「凄いじゃない。二人ともちょっと前まで高校生だったとは思えないタイムよ!!これなら全国も‥‥」
興奮気味に走り寄ってきた少女ははっと我に帰るとぶっきらぼうな態度を作り、疲れて座り込んでいる2人にタオルを投げた。
「ま‥‥まあこれ位わざわざ私がマネージャーなんてやってあげてるんだから当然だけど!!ちょっと誉めたからって勘違いしないでよね
////」
(; ^ω^) 「それより僕と長岡どっちが速かったかお?」
その質問の答えが長岡も気になるようで息が荒いままの顔を少女に向けた。
「残念だけど内藤君も長岡君も同時よ。」
二人の表情を読み取った少女は意地悪そうにストップウォッチを突きだして言った。
長岡「またかよ‥‥」
(; ^ω^) 「やれやれだお」
39 名前: 1
投稿日: 2005/11/02(水) 21:07:40 ID:b6VzMM8jO
2人はハーっと息を吐いた。内藤と長岡は小学生のころ陸上を始めてから
ずっとライバルだった。
「それにしてもあんた達も馬鹿よね。二人揃って高校時代[百年に一人の逸材]なんて呼ばれてたのにこんな弱小陸上部の大学に入って来たんだ
もの」
長岡「それはコイツがツン先輩に一目惚れs‥‥モガ」
(; ^ω^)「うああ!!違うお!!朝早く起きるのが苦手だから近くの大学にしただけだお!!!」
ニヤニヤしたお喋りな口を内藤は急いで塞いで言った。
ツン「あんたらしい馬鹿みたいな理由ね。まあ万年弱小部のウチとしては有り難いけど。」
内藤は長岡の口から手を放したがその口はまだニヤニヤしていた。何か言いたくてたまらなさそうな顔だ。
長岡「コイツ陸上と趣味のバイクぐらいしか能がないから」
(#^ω^)「うるさいお!!お前に言われたくないお!!」
ツン「はいはい。そこらへんにして。トラック整備して今日はあがるわよ」
( ^ω^)「あ!!ツン先輩!!僕も手伝いますお!!」
内藤は長岡に飛びかかろうとしていた大勢から急いで立ち上がった。
ツン「え‥‥!?い‥‥いいわよ!!あんたじゃ邪魔になるだけだもの!!そ‥‥それよりあんたは陸上の事だけ考えてればいいのよ!!
‥‥あ‥‥ありがと‥‥陸上‥‥頑張りなさいよ」
恥ずかしそうに駆けていった少女を見つめて内藤は溜め息をもらした。
夕日に照らされた長い髪がキラキラと輝いて見えた。
41 名前: 1
投稿日: 2005/11/02(水) 21:08:49 ID:b6VzMM8jO
( ^ω^)「やっぱりツン先輩は可愛いお‥‥。陸上やっててよかった
お‥‥」
長岡「確かにあれはいいおっぱいだ‥‥」
(; ^ω^)「ちょwwwwwおまwwww」
長岡「おっぱいこそ我が命!!我が信念!!」
_ ∩
( ゚∀゚)彡 おっぱい!おっぱい!
( ⊂彡
| |
し ⌒J
(; ^ω^)「長岡!!落ち着くお!!」
長岡「ハッ‥‥ああ」
(; ^ω^) (長岡のおっぱい好きも困ったものだお‥‥)
長岡「そうだ内藤。今日ウチに寄って行けよ。親父が手作りカレー取って置いてくれたらしいんだ」
( ^ω^) 「うはwwwww行くおwwww」
長岡の家は「バーボンハウス」と言うバーで、昼はお洒落な喫茶店として営業しておりマスターの手作りカレーはそのランチメニューの中でも一
番人気だった。
更衣室で着替えを終え長岡とくだらない話をしながら(と言うか長岡が必死におっぱいについて語っていた)内藤はふと空を見上げた
( ^ω^) (嫌な感じの空だお‥‥)
少し前まで夕日に照らされたいた空はいつの間にかどんよりとしたものになっていた
48 名前: 1
投稿日: 2005/11/02(水) 21:14:38 ID:b6VzMM8jO
長岡「ただいま」
カランコロンと鈴の音をならし長岡はバーの中へ入っていった。
( ^ω^) (この音‥‥昔から好きだったお‥‥)
そう言えば子供の頃この音が聴きたくてここのドアを何度も開け閉めして父さんに怒られたっけ‥
長岡「内藤?何してんだ?早く入れよ」
( ^ω^)「あ‥‥ああゴメンだお」
ぼんやりと考え事をしていた内藤は長岡の言葉にハッと我に帰り、そそくさと店の中へ入った。
少し薄暗いバーの中はまだ準備中で、客は一人も居なかった
内藤はマスターの正面のカウンターの席に座った。ああ昔はこの椅子に座ったら足がとどかなかったんだよな‥‥
長岡は着替えてくるわ、と言い残し階段を上がって二階へ消えていった
(´・ω・`)「やあ。久しぶりだね。ホライゾン君」
( ^ω^)「お久しぶりですお。マスター。」
(´・ω・`)「バーボンでもサービス‥‥と行きたい所だが君はまだ未成年だったね。
待っていてくれ。今カレーの用意をするよ。」
( ^ω^)「すみませんだお」
マスターはガチャガチャと鍋とカレーの残りを取り出しコンロに火をいれた。
51 名前: 1
投稿日: 2005/11/02(水) 21:17:57 ID:b6VzMM8jO
(´・ω・`)「‥‥早いものだね‥‥君達ももう大学生か‥‥」
やがてカレーのいい匂いが漂ってきた。このカレーを食べるのもいつ以来だろうか。
(´・ω・`)「五年前に死んだアイツも君の立派な姿を見たら喜ぶだろうな‥‥」
( ^ω^)「‥‥‥‥‥」
アイツ、とは父さんの事だろう。
内藤の父親は研究者だった。もっとも、どんな研究をしていたのか内藤は知らないしおそらく知ることも無いだろう。
( ^ω^)「マスターには感謝しているお。あれから色々お世話になって‥‥」
(´・ω・`)「まあ‥‥アイツとは長い付き合いだったからね」
親友のよしみさ。とマスターは寂しそうに笑った。
53 名前: 1
投稿日: 2005/11/02(水) 21:21:15 ID:b6VzMM8jO
もともと内藤と長岡が知り合ったのは父親同士が知り合いだったからで、
内藤と長岡自身は本当に生まれてすぐからの知り合いにある。(もっともその頃のことなんか殆ど覚えていないが)
そしてお互いが父子家庭になってからは本当にずっと一緒だった。
陸上を始めたのも長岡がきっかけだったっけ‥‥。
と、階段からトントンと降りてくる足音が聞こえた。
長岡「おう!!お待たせ」ひょこっと長岡が階段の手すりから顔を出した。
(´・ω・`)「ちょうど今カレーが温まったところだよ。ジョルジュも椅子に座りなさい」
内藤の前に白い皿に多めに盛られたご飯(マスターが気を使ってくれたのだろう)とルーが入った綺麗に磨かれた銀色のランプ型の容器が置かれ
た
内藤はルーをご飯に少し掛け、その部分をスプーンで口に運んだ。
口の中に広がるスパイシーな味と香りを確かめながらいつまでもこの味が変わらないといいなと思った。
59 名前: 1
投稿日: 2005/11/02(水) 21:24:06 ID:b6VzMM8jO
( ^ω^)「ごちそうさまだお。凄く美味しかったお」
あっという間の間に内藤の皿は綺麗に空になってしまっていた。
(´・ω・`)「それはどうもありがとう。こんな物で良ければいつでもウチに来なさい。一人暮らしじゃ余り美味いものも食べれないだろう。
陸上選手なんだから体にも気を遣わなきゃね。」
( ^ω^)「何から何までありがとうございますだお。それじゃあそろそろ僕は」
帰りますお、と言おうとした時、不意に雨がポツポツと屋根を打つ音が聞こえた。
63 名前: 1
投稿日: 2005/11/02(水) 21:26:17 ID:b6VzMM8jO
と思った次の瞬間雨音は激しい物に変わっていた。
一瞬のうちに窓ガラス越しに見える夜の風景は水滴で歪んでしまった。
(; ^ω^)「‥‥帰れないお‥‥」
長岡「せっかくだから雨が止むまで遊んでいけよ」
(´・ω・`)「そうして行きなさい。」
(; ^ω^)「はい。本当に何から何まで(ry」
長岡「じゃ。二階の俺の部屋に来いよ。」
そう言うと長岡はまたトントンと階段を登って行った。
しかし半分位登った所でトタトタとまた降りてきて手すりの間からぴょこっと顔を出した
長岡「そうだ。先にシャワー浴びて来いよ。」
(; ^ω^)「うはwwwwwwwキメェwwwwwww」
長岡「そうじゃねえよ!!!!部活の後で汗臭えから俺の部屋に入る前にシャワー浴びて来いって言ったんだよ!!!」
( ^ω^)「なんだ‥‥びっくりしたおwwwwwww」
長岡「うるせぇ!!こっちがびっくりしたよ!!男のおっぱいになんか興味ねえよ!!!!!」
71 名前: 1
投稿日: 2005/11/02(水) 21:37:04 ID:b6VzMM8jO
( ^ω^)「ん?どうやら雨があがったようだお?」
長岡「ん。ああ本当だ。雨の音が止んでるな」
長岡はガラガラと窓を開けた。
湿気の多い風がぬるりと長岡の(汚い)部屋に流れ込む
暗闇から流れるぬるいはずの空気に内藤は寒気を覚えた
長岡「止んだけど‥‥また降り出しそうだな‥‥送って行くよ」
( ^ω^)「別にいいお。一人で大丈夫だお」
長岡「遠慮するなよ。どうせこの雨なら明日は室内練習だろうしな」
77 名前: 1
投稿日: 2005/11/02(水) 21:50:22 ID:b6VzMM8jO
一階に降りると店の中は客の姿がちらほらと見えた
店の中は先ほどの静かな雰囲気とは違いほのかにムーディーな音楽をながし、準備中だったときよりお洒落に見えた
長岡「親父、内藤を家まで送って行くよ」
(´・ω・`)「そうか、あまり遅くならないようにな」
( ^ω^)「マスター。お邪魔しましたお」
マスターは銀色のシェイカーを振るい、お客にカクテルを作っている所だった
余談だが「スナック」ではなく「バー」を名乗る場合は日本バーテンダー協会の公認バーテンが店に居なければならない。
マスターはこのバーではバーテンも兼ねている
見かけによらず何でもこなせる凄い人なのだが本人は「息子が良く食べるから沢山働かないと」笑っていた
ドアを開け内藤と長岡は外に出た
カランコロンの鈴の音が聞こえなかった気がした
80 名前: 1
投稿日: 2005/11/02(水) 22:11:51 ID:b6VzMM8jO
外はすっかり暗闇だった。
生ぬるい空気は相変わらずだったが、それは固まっているかのように風一つ無い
( ^ω^) (‥‥‥‥嫌な感じがするお‥‥)
長岡「内藤!!おい!!内藤!!」
( ^ω^)「あ‥‥ああなんだお?」
内藤が長岡の方を見ると心配するような顔で見つめていた
長岡「<なんだお?>じゃねーよ。今日はえらくボーっとしてるじゃないか?疲れてんじゃないのか?」
(; ^ω^) 「あ‥‥ああ何でもないお」
長岡「そうか‥‥?それならいいけど‥‥‥」
星一つ無い暗い空の下を二人はゆっくりと歩いた。
しばらく沈黙が流れていたがそれを破ったのは長岡だった。
長岡「なあ内藤‥‥。お前‥‥。 ずっと陸上続けるのか?」
( ^ω^) 「う‥‥うん。僕には走ることぐらいしか取り柄もないから‥‥」
83 名前: 1
投稿日: 2005/11/02(水) 22:20:37 ID:b6VzMM8jO
( ^ω^) 「長岡は‥‥長岡はどうするんだお‥‥?」
長岡「俺は‥‥親父の後を継ごうと思うんだ‥‥。あの店‥‥俺も好きだしさ‥‥」
( ^ω^)「そうか‥‥」
内藤は内心ショックだった。ずっと一緒だった‥‥。父が死んだ時、長岡が一緒だったから乗り越えられた
これからもずっと同じ道を歩むと思っていた‥‥なのに‥‥
( ^ω^)「それなら何十年後でもカレーがたべられるお!!」
長岡「内藤‥‥‥。」
( ^ω^) 「僕達が友達なのもずっと変わらないお!!!!」
84 名前: 1
投稿日: 2005/11/02(水) 22:32:04 ID:b6VzMM8jO
不意に空で何かが光るのが見えた。
いや光るだけではなく動いている
( ^ω^)「流れ星‥‥かお?」
長岡「いや‥‥おかしいぞ!!今日は星なんか見えないはずだ!!!」
(; ^ω^) 「UFOかお!?」
長岡「そんなアホな!!」
確かに不規則に空に蠢くそれはUFOの様にも見えた。だが‥‥
( ^ω^) 「空が!!!」
その瞬間空が割れた。
まるで空が一枚の鏡で、それがハンマーで叩かれたかのように
亀裂が 走る
( ^ω^)「うわああああああああああ!!!!!!!!」
86 名前: 1
投稿日: 2005/11/02(水) 22:52:00 ID:b6VzMM8jO
空の破片を避けようと内藤はとっさに身をかがめた。
‥‥‥だがそんなものはいつまでたっても落ちては来なかった
内藤は恐る恐る顔をあげる‥‥
長岡は空を見上げたまま一歩も動けないで立ち尽くしていた。蛇に睨まれたカエルよりもショッキングなのだから仕方がない
(; ^ω^) (‥‥‥‥)
内藤はゆっくりと空を見上げた
空はぽっかりと穴を開けていた
その中に無数の光の塊が蠢いている
長岡「なん‥‥なんだよこれ‥‥」
(; ^ω^) 「!!!あの光がこっちに来るお!!!!!」
無数の光の塊が穴から飛び出し、その幾つかが二人を取り囲んだ
そして何かを確かめるかのように二人の周りをうろうろしている
長岡「なんだよ‥‥なんなんだよこれ‥‥。!!!!」
( ^ω^)「長岡!!!!!!」
光の塊は長岡を取り囲み長岡の体を宙に持ち上げた
88 名前: 1
投稿日: 2005/11/02(水) 23:13:28 ID:b6VzMM8jO
やがて長岡の体は空の穴の中へ引っ張られていく
( ^ω^)「長岡ああああああぁぁぁぁ!!!!!!」
内藤は長岡を必死においかけた
普段陸上で鍛えた脚力のお陰かジャンプしてギリギリ長岡の足首を掴みぶら下がった
( ^ω^)「絶対‥‥絶対助けるお!!!!」
長岡「内藤‥‥‥」
不意に胸に鈍い衝撃が走った。ゆっくりと自分の胸を確かめた内藤は言葉を失った。
光の一つが自分の胸を貫いていた。
そして瞬間激しい熱さと痛みが内藤の体を駆け巡った。
( ^ω^)「あああああああああああ!!!!!!!」
思わず手を放した内藤は背中を地面に叩きつけそのまま気を失った。
長岡「内藤オオオオオオォォォ!!!!」
長岡の体はその叫び声と共に空へと消えていった
空は元通り黒い雲に覆われ、何時しかまた雨が降り出していた
93 名前: 1
投稿日: 2005/11/02(水) 23:45:00 ID:b6VzMM8jO
( ^ω^)「う‥‥こ‥‥ここは‥‥どこだお‥‥?」
(´・ω・`) 「やあ、目が覚めたかい。」
( ^ω^)「マス‥ター?」
消毒された匂い‥‥硬い枕とベッド‥‥ここは‥‥
(´・ω・`)「ここは病院だよ。ほら、取り敢えずリンゴでも食べて落ち着いて欲しい」
内藤は手渡されたリンゴを見つめながら状況を整理しようと努力したが頭がうまく働かない
頭が重い‥‥
(´・ω・`)「無理はするな。君は3日も眠ったままだったんだ」
( ^ω^)「‥‥‥」
そうだ‥‥あの夜に光の塊に‥‥‥‥!!!!
( ^ω^)「長岡は!!?長岡は無事なんですかお!?」
(´・ω・`)「‥‥‥ジョルジュは‥‥」
94 名前: 以下、名無しにか
わりましてVIPがお送りします 投稿日: 2005/11/02(水) 23:47:39 ID:b6VzMM8jO
マスターは言いにくそうに言葉を濁した。
いつも申し訳無さそうな顔しているマスターが普段よりも一層沈んで見えた
(´・ω・`)「ジョルジュは行方不明のままだ」
( ^ω^)「‥‥‥!!!!」
そうだ‥‥長岡はあの時‥‥
( ^ω^) (‥‥‥‥長岡‥‥)
‥‥‥‥タスケテ‥‥
( ^ω^)「!!!!!」
不意に内藤の頭の中に誰かの声が響いた。
何故かは解らない。 だがその声に答え無くてはならない。今まで自分の中に無かったモノがそう叫んでいた。
103 名前: 1
投稿日: 2005/11/03(木) 03:31:10 ID:BejCSp//O
( ^ω^) 「行かなきゃ‥‥‥だお‥‥。」
内藤は自分の腕に刺されていた点滴の針を抜き、適当にベッドに投げ捨てた
(´・ω・`) 「どこへ行く気だ!?ホライゾン君!?」
‥‥スケ‥テ‥‥
( ^ω^) 「声のする方へ‥‥助けを呼ぶ‥‥声‥‥」
(´・ω・`) 「声!?何を言っているんだ。ホライゾン君!?ひどい怪我なんだぞ!?」
( ^ω^)「僕にも解らないお‥‥。でも聞こえるんだお‥‥。僕に助けを求める声が!!」
104 名前: 1
投稿日: 2005/11/03(木) 03:32:38 ID:BejCSp//O
満身創痍の人間とは思えない強い叫びに気圧されたマスターはゆっくりと
道を開けた
内藤は傷ついた体を引きずり、やっとたどり着いた病室の入り口にもたれ掛かった
( ^ω^)「絶対に助けると約束したお‥‥なのに僕は長岡を助ける事が出来なかったお‥‥」
(´・ω・`)「ホライゾン君‥‥。」
( ^ω^) 「だから僕はもう僕に助けを求める手を放すわけにはいかないんだお!!!!」
113 名前: 1
投稿日: 2005/11/03(木) 09:28:20 ID:BejCSp//O
(´・ω・`)(‥‥ホライゾン君‥‥)
正直内藤が何のことを言っているのか解らなかったし、彼が言った事を全て信じていた訳では無かった
ただ、自分の息子を想ってくれた気持ちが嬉しく、そしてそれ故に深く傷ついた内藤の心が不憫だった。
(´・ω・`) 「待ちなさい、ホライゾン君」
(; ^ω^)「なんだお?いくらマスターでも止めさせる訳には‥‥‥」
内藤はマスターが何かを自分に投げるのを見た。
病室の蛍光灯に照らされて空中で鈍い銀色に光ったそれは、次の瞬間一度シャランと音を立て内藤の右手におさまった。
( ^ω^)「これは‥‥バイクのキーかお‥‥?」
(´・ω・`)「いくら君とは言えその状態ではどこにも行けないだろう?私のバイクを使いなさい」
( ^ω^)「マスター‥‥」
(´・ω・`)「どうやら君は体の傷より心の傷の方が酷いらしいからね
それで少しでも君が癒やされるならば‥‥‥」
114 名前: 1
投稿日: 2005/11/03(木) 09:34:07 ID:BejCSp//O
内藤は黙ってその右手のなかのバイクのキーを握り締めた。
長岡が見つからない事が心配なのはマスターも同じはずなのに‥‥。
( ^ω^)「ありがとうだお‥‥マスター」
(´・ω・`) 「きちんと‥‥戻ってきてくれよ‥‥ホライゾン君」
内藤は何かを決めたように病室の外へ出て行った。
その足取りは心なしか先ほどまでのそれよりずっと心強かった。
ふう、とマスターは一つ息を吐くと、さっき自分で切ったリンゴをかじった。
やがて外からはバイクの排気音が響き、そして遠ざかって行った。
マスターはそれを病室から背中で見送った
(´・ω・`) (さて‥‥看護婦さんになんて言えばいいのかな‥‥)
120 名前: 以下、名無しに
かわりましてVIPがお送りします [sage] 投稿日: 2005/11/03(木) 10:56:40 ID:BejCSp//O
( ^ω^) (待っていてくれお‥‥‥)
内藤はバイクを風のように走らせた。
助けを求める声はどんどん強く大きくなっていく
だが次の瞬間その声はブツンという嫌な音を立て途切れた。ラジオが壊れたような‥‥。音楽を流していたコンポの電源を切られたような不快な
感覚‥‥。
そして次に頭に流れて来たのはもはや声ですらなかった。
「ああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!」
(; ^ω^) 「ぐぅ!!!」
突如頭の中にこだました叫びに耐えきれず思わず内藤はバイクを止めた。
声にもならない声、頭の中にテレビのザーッというノイズが鼓膜を破るほどの大音量で流されるような不快な感覚。
ああ‥‥でも‥‥
( ^ω^) 「近いお‥‥‥」
内藤は気力を振り絞るようにアクセルを吹かした。
体を鉛の様に縛り付けていた傷の痛みはいつの間にか消え去っていた
123 名前: 1
投稿日: 2005/11/03(木) 11:41:31 ID:BejCSp//O
「きゃあああああ!!!」
昼時の街のショッピングセンターで若い女の悲鳴があがる
その異常に気付いた人達が足を止めそれを注視した
平日とは言えちょうどランチの時間で人混みの溢れるその場所にあって、それは異様な光景だった
若い男が血を流し倒れている。
そのいかにも若い男が着るダボッとした上着は血にまみれ、
結構な値段がしたであろう同じくダボダボのジーパンは片方の膝から下がその中にあっただろう足と一緒に千切れていた
だが問題はそんなことではなく、その横にいたのはゆうに2メートルを越えるであろう異形の化け物だった。
「何よ‥‥何な‥‥これ」
恐怖で声がかすれうまくでないしゃべれない。逃げようにも腰が抜けて動けない
後ろで一斉に悲鳴があがり野次馬たちが逃げ出していく。
一気に町はパニックに包まれていた
126 名前: 1
投稿日: 2005/11/03(木) 11:56:17 ID:BejCSp//O
(´・ω・`)「ふう」
看護婦に説明を終えた(と言うかうまくはぐらかし)マスターは一階の受付の前のロビーで一息ついたところだった
入院患者やその見舞いに来たのであろう人達が幾らか椅子に座り、売店で買った新聞を読んだりしてゆっくりとした空気が流れていた
だが突如、医師や看護婦は忙しそうな雰囲気を出し始め、ロビーは騒がしいものへと変わって行った
ロビーでくつろいでいた人たちも何事かと不安そうな表情をしている
マスターはその中の看護婦に事情を聞くために話をかけた
(´・ω・`)「どうかしたんですか?」
看護婦「何か街のほうで騒ぎがあったらしくて‥‥転んだり将棋倒しにあって怪我した人たちが運ばれてくるそうです」
そう言うと看護婦はまた忙しそうに作業へと戻っていった
(´・ω・`) (街で‥‥ホライゾン君は!?)
127 名前: 1
投稿日: 2005/11/03(木) 12:12:04 ID:BejCSp//O
急いで病室に戻ったマスターはテレビを付けた
いつもなら陽気な音楽と共に料理番組を流しているはずのテレビは深刻な雰囲気の臨時ニュースに変わっていた
「繰り返します。○△区○○町で通り魔殺人と思われる事件が起こり‥‥」
(´・ω・`) 「!!すぐ近くじゃないか!!」
「以前詳細は不明ですが死者やパニックを起こし怪我人が出たという情報も‥‥あ!はい!!現地と中継が繋がったようです!!」
テレビはたくさんのパトカーと警察の前でアナウンサーが中継している画面へとパッと変わった
「××さん聞こえますか?」
「たった今入った情報なんですが、一人若い女性が救出されたそうです。
怪我はあるようですが命に別状は無いようです。それと‥‥」
(´・ω・`) (一体何が起こっていると言うんだ‥‥)
「女性の証言によりますと一人の少年が助けてくれたと‥‥警察は引き続き犯人の捜索とこの少年の救出を進め‥‥」
(´・ω・`) (‥‥‥‥!?まさか‥‥ホライゾン君‥‥!?)
131 名前: 1
投稿日: 2005/11/03(木) 12:30:33 ID:BejCSp//O
(; ^ω^) 「はぁ‥はぁ‥‥ちょっと‥‥ヤバいお‥‥」
自分が囮になることであの女性は逃がす事が出来た。 だが怪物は内藤を執拗に追い続けている。
隠れてもすぐに見つかってしまう。だが知能があって探していると言うよりは本能的なレベルで内藤を見つけられるようなものの様だった。
(; ^ω^) 「でも‥‥みんな逃げ終わったはずだお‥‥僕も‥‥」
逃げ足には自信がある。
あの化け物も(予想外に)速かったが逃げきれないことは無いはずだ。
とにかくバイクのある所まで逃げきれば内藤の勝ちだった
( ^ω^) 「よし‥‥もうひとふんばり‥‥ぐあ!!」
ノイズがまた内藤の中な響いた。
だが今度はノイズの中に何かを感じ取った
( ^ω^) (これは‥‥悲しんでるのかお‥‥!?)
内藤は周りを見てバッと広い通りに躍り出た
前からゆっくりと巨大な怪物が歩み寄ってくるのが見えた。
まるで内藤を待っていたかのようだった。
( ^ω^) 「この声<ノイズ>はお前だったのかお?」
132 名前: 1
投稿日: 2005/11/03(木) 12:41:29 ID:BejCSp//O
内藤は酷く落ち着いていた。だが鼓動だけが壊れたかのように速くなって
いく。
( ^ω^) 「助けを求めていたのはお前だったのかお?」
怪物は異常なまでに筋肉が発達した丸太のようなその腕を嬉しそうに振り上げた。
それは内藤に会えた喜びだったのか、獲物を見つけた喜びだったのか‥‥
否、恐らくその両方なのだろうと内藤は感じ取った
鼓動はなおも速くなっていく
( ^ω^) 「助けるお‥‥」
内藤体から光が溢れ出す。鼓動はますます速くなり、ノイズはクリアになっていく
137 名前: 1
投稿日: 2005/11/03(木) 13:20:17 ID:BejCSp//O
内藤の体から溢れ出した光はやがて内藤の体を新しく形作っていく
( ^ω^) 「わかるお。力に縛り付けられたお前の魂が叫びをあげるのが!!だから!!」
絶対に!!!!!
ヽ !
(=ЮωO)⊃助け出してみせるお!!!!!
(⊃¥)
/ ヽ
クリアになったノイズは感情のうねりとなって内藤の頭に流れ込んできた
それは絶望だった
それは嫉妬だった
それは憎悪だった
それは悲しみだった
そして安堵だった
救済を求める魂の叫びだった
146 名前: 1
投稿日: 2005/11/03(木) 15:40:12 ID:BejCSp//O
ヽ !
(= ЮωO) 「こ‥‥これはなんだお!?(力がみなぎってくる‥‥これなら‥‥戦えるお!!)」
光の力により変身を果たした内藤はその力を確かめるように拳を強く握ると、怪人の方へゆっくり構えた
ヽ !
(= ЮωO) 「いくお!!」
そう叫ぶと内藤は一瞬で怪人との間合いを詰め、強烈な拳打を叩き込んだ。
筋肉と外骨格に覆われた硬いはずの体に内藤の拳がめり込む。
「ウ゛オ゛オ゛オ゛オ゛」
その攻撃がこたえたようで怪人はうめき声をあげたが、太い腕を振り回し内藤を打ちすえようとした。
しかし怪人の腕は空を切り、地面のアスファルトを打ち砕いただけであった。
ヽ !
(= ЮωO) 「無駄だお。その程度の速さでは僕には追いつけないお」
152 名前: 1
投稿日: 2005/11/03(木) 16:37:11 ID:BejCSp//O
怪人が攻撃を放った時にはすでに内藤は怪人の背後に回っていた。
内藤の声でそれに気付いた怪人がすぐに振り向き内藤の顔にめがけて強烈なパンチを繰り出した。
だがアスファルトを粉々に砕くほどの威力を持つ一撃を内藤は片手で軽々と止めていた。
ヽ !
(= ЮωO) 「トウ!!」
その体制から内藤は怪人の腹にめがけて蹴りを放つ。その威力は怪人の攻撃とは比べものにならない程の物だった
余りの衝撃に怪人は数十m吹っ飛ばされビルの壁に突き刺さって、止まった。
だが流石に怪人の頑強さは凄まじく、これすらも決定的なダメージを与えられない。
怪人は怒り狂いながら自分を下敷きにしているガレキの山を力任せに吹き飛ばし、内藤に向かって突進して来ようとしていた。
155 名前: 1
投稿日: 2005/11/03(木) 17:14:49 ID:BejCSp//O
怪人がまだ健在である事を認めた内藤は怪人の方を向き、短距離走のクラ
ウチングスタートのようなポーズをとった
ヽ !
(= ЮωO) 「ハアアアアアアア!!!」
内藤が気合いを込めると体をまばゆい光が包み込み、スタートの準備をすると光は地面を走り怪人に向かって一本の光の道<トラック>を作り出
した
内藤は怪人の10歩目の足音をスタートの合図に見立てて走り出した
腕を水平に構え、飛び立つジェット機のように
ヽ !
⊂二二二( =ЮωO)二⊃
| ¥ /
( ヽノ
ノ>ノ
三 レレ
156 名前: 1
投稿日: 2005/11/03(木) 17:15:34 ID:BejCSp//O
内藤が通り過ぎた所から光の道は燃え上がるように輝き内藤を包んでいく
一瞬の間に内藤は長岡の事を思い出していた。
長岡一緒に横を走っている気さえした。
やがて一つの光の塊となった内藤は怪人の体を貫いた
怪人の動きは次第にゆっくりとなり崩れる様に倒れ伏せた
内藤の体も停止し光が散るように消えていくが、そこにはまだ光の残り火がくすぶっている
ヽ !
(= ЮωO) 「光よ‥‥哀れな魂に安息と救済お‥‥」
完全に内藤の体を包んでいた光が消えたとき、内藤の後方で怪人の体が爆散し、光の粒となって消えていった。
そのとき内藤の頭のなかに微かに「ありがとう」と言う声が聞こえた気がした
162 名前: 1
投稿日: 2005/11/03(木) 18:46:45 ID:BejCSp//O
内藤の体から光が散ったかと思うと、その体は元に戻っていた
内藤はパトカーの音が近づいていることに気がついた
取りあえずここを離れた方がいいと判断した内藤は急いでその場所を離れることにした
( ^ω^)(・・・取りあえずマスターには報告しなきゃだお)
内藤は警官達やマスコミに見つからない様に少し遠回りしてバイクが止めてあるところへ戻ることにした。
バーボンハウスへ帰る途中今までの状況を整理してみることにした
まずあの空が割れた夜‥‥あれが多分すべての始まりだった。あの時光が僕を貫いて‥‥
多分この力はあの光が原因だろう。
‥‥ならなぜあの光は長岡を連れていかなきゃならなかったのだろうか‥‥?
次にあの怪物‥‥なぜあんな物が生まれ、そして僕にあお怪物の声が聞こえるのか‥‥‥‥
‥‥‥‥まだ解らないことだらけだ‥‥‥‥
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