第二話
165 名前: 1
投稿日: 2005/11/03(木) 19:32:32 ID:BejCSp//O
バーボンハウスの前へもどると、みせのなかは暗いままで、準備中、と書
かれた札が下がっていた
確かに今はバーの開店の準備をしなければならない時間帯ので閉まってもおかしくはないのだが、この状況なら店を休んでいる事も十分に考えら
れた
だが内藤の予想に反して店の鍵は開いたままで、中に入るとマスターが忙しそうにカウンターの向こうで開店の準備をしていた
驚いて突っ立っていた内藤に、マスター方から声をかけてきた
(´・ω・`) 「やあ、待っていたよ。・・・どうしたんだい?取りあえず座ったらどうだい?」
166 名前: 1
投稿日: 2005/11/03(木) 19:33:19 ID:BejCSp//O
(;
^ω^) 「え・・・ええ・・すみませんだお。それにしても随分早く店を開けるんですね?」
内藤はマスターのすぐ前のいすに座りながら聞いた。マスターは相変わらずグラスを磨きながら答えた
(´・ω・`)「ずっと休んでもいられないしね、動いていた方が気が紛れるというのもあるし。
それに‥‥」
マスターがピタリと手を止めた
(´・ω・`)「ずっとサボってるとジョルジュに怒られそうな気がしてね‥‥‥」
( ^ω^)「マスター‥‥‥。」
189 名前: 1
投稿日: 2005/11/04(金) 08:05:31 ID:N7NyqD0+O
マスターはまたグラスを拭く作業に戻ったがそれが一通り済むと、内藤に
向かって話し掛けた
(´・ω・`)「ちょっと待っていてくれ、今コーヒーをいれるよ」
( ^ω^) 「あ‥‥お構いなくですお」
(´・ω・`)「遠慮しなくていいんだよ。私も落ち着いて話を聞きたいし、開店までは結構時間があるからね」
そう言いながらマスターは銀色のポッドに水を注ぎ、それを火にかける
銀色で統一された道具類にもマスターのセンスの良さが伺えた
( ^ω^)「すみませんだお。」
静かで暗い店内にボオーっというコンロの火が踊る音だけが微かに響いていた
197 名前: 1
[sag] 投稿日: 2005/11/04(金) 12:31:45 ID:N7NyqD0+O
時折、白いカップを口に運びながらマスターは静かに内藤のはなしを聞き
続けた
それは長岡がつれさられた場面でも、内藤が変身した場面でも変わらなかった
一通り話終わった内藤がマスターの方を見ると、色々と考えごとをしているようだった
( ^ω^) 「自分自身信じられない話だお・・・でも」
(´・ω・`)「いや・・・信じるよ。」
内藤が言いかけたところで、マスターが唐突に口を開いた
(´・ω・`)「実はね・・・私は君のお父さんと同門の研究者だったことがあるんだ・・・」
( ^ω^)「!!・・・初耳だお・・・。」
200 名前: 1
[sag] 投稿日: 2005/11/04(金) 13:17:42 ID:N7NyqD0+O
常々ただ者ではないと思っていたがそんな過去まであったとは・・・
内藤は感嘆のため息を漏らしながらマスターの顔を眺めた
(´・ω・`)「それでね・・・その研究の内容なんだが・・・ある伝説に関する物なんだ。」
( ^ω^)「伝説・・・?」
(´・ω・`) 「その伝説というのは・・・くわしくは>>30を見てくれ」
(; ^ω^) (手抜きだお・・・)
(´・ω・`)「すまないが煙草を吸っていいかい?」
( ^ω^)「お構いなくだお」
(´・ω・`)「すまないね」
そう言うとマスターポケットから煙草を取り出しよくある百円ライターで火を付けると大きく息を吸い込み、白い煙を吐き出した
(´・ω・`)y−~「これは仮説にすぎないが伝説にある<奪われた力>が君の言う光の力だというならば・・・
君の実家にあるお父さんの研究室に何か手掛かりが残されているかもしれない・・・」
211 名前: 1
投稿日: 2005/11/04(金) 17:42:07 ID:N7NyqD0+O
(´・ω・`)y−~「明日は定休日だからね。私も一緒に行かせてもら
う
君の実家ならここからでも朝早くからバイクを飛ばせば昼前には着くだろう」
内藤の実家は長野県の山奥にある一軒家で、自然に囲まれた綺麗な所だった。
内藤の実家は内藤がまだ幼かった頃に、元々都会が好きではなかった内藤の父がとある資産家の別荘を買い取って改築したものだったので、その
造りはなかなかに豪華なものだった。
内藤が小学生にあがってまもなく母親が鬼籍に入ってからは東京の郊外にあるマスターの店の近所に引っ越したものの、内藤の父親は実家のラボ
にこもり研究を続ける事も多かった。
そして‥‥
五年前に内藤の父親が自らの命をたったのもその場所だった
普段は近づかないよう言われていたラボの中で冷たくなっていた父の姿が内藤の記憶の中から呼び起こされる。
214 名前: 1
◆ndPkY/NmQ6 [酉付けてみた] 投稿日: 2005/11/04(金) 17:49:25 ID:N7NyqD0+O
マスターは煙草の灰を灰皿に落としながら、黙ったままの内藤に優しく声
をかけた
(´・ω・`)y━~ 「‥‥無理をする事はない‥‥あそこは君にとって楽しい思い出ばかりではないからね
私一人でも‥‥」
( ^ω^) 「大丈夫ですお。僕も行きますお。」
内藤は出来るだけ気丈な声でマスターの言葉をさえぎる様に言った
( ^ω^)「僕には知らなくてはいけない義務があるお。だから‥‥」
215 名前: 1 ◆ndPkY/NmQ6
投稿日: 2005/11/04(金) 17:51:49 ID:N7NyqD0+O
マスターは途中で途切れた内藤の言葉を聞くと短くなった煙草の煙をもう
一度深く吸い込み、それを吐き出しながら煙草の火を灰皿でもみ消して言った。
(´・ω・`)「‥‥そうだね‥‥それじゃあ明日の明朝六時にウチの店の前に来てくれ
‥‥明日は早い。準備もあるだろうからそろそろ帰りなさい」
( ^ω^) 「ええ。コーヒー、ご馳走様でしたお」
内藤はマスターに礼を言うと借りていたバイクのキーをマスターに手渡し、店の外に出た。
西の空に落ちていくいつかと同じ黄金色の太陽を見つめ、内藤は決意を新たにしたのだった。
220 名前: 1 ◆ndPkY/NmQ6
投稿日: 2005/11/04(金) 18:18:52 ID:N7NyqD0+O
( ^ω^) 「お待たせしましたお」
(´・ω・`) 「やあ、早かったね。なかなか感心だ」
六時五分前ごろ内藤がバーボンハウスの前に着くと既にマスターは準備をおえていた
上下レザーのライダースを着込んだマスターは四十半ばとは思えないほどキマっていた
普段は喫茶店のエプロンかバーテンの衣装しか見かけないマスターが、いつもより若く見える
(´・ω・`) 「じゃあ行こうか」
( ^ω^) 「はいだお」
軽い挨拶を終え、二人は一路長野をめざす。
途中高速道路で数回の休憩をはさみ、長野についた頃には十時近くになっていた
222 名前: 1 ◆ndPkY/NmQ6
投稿日: 2005/11/04(金) 18:32:58 ID:N7NyqD0+O
高速を降りて少し経った頃だろうか、バイクを走らせていた内藤がふと右
方の空を見るとそこにごく小さなひびが入った気がした。
(; ^ω^) (えっ!?)
もう一度その方向を見たがひび割れなどなく、ましてや穴が開く気配も光の塊が飛んでいく気配も微塵も無かった。
( ^ω^) (‥‥きっと気のせいだお‥‥色々ありすぎて神経質になっているだけだお。)
内藤はそう自分に言い聞かせ、前方に向き直しバイクを飛ばすように走らせた。
やがて二人のバイクは木々が茂る山の中へと入って行く。
右へ左へと緩いカーブを描き続ける未舗装の轍の上を二人は転ばないよう慎重に走っていった。
223 名前: 1 ◆ndPkY/NmQ6
投稿日: 2005/11/04(金) 19:06:02 ID:N7NyqD0+O
奥に進むに従って、内藤の記憶に残る風景が広がっていく
今は亡き母親と一緒にカブトムシを採った大きな木を見つけ、内藤の心は締め付けられるような思いがした
大きな家の前で、前を走っていたマスターがバイクを止める
それに並べるように内藤もバイクを停めた
( ^ω^) (‥‥‥)
(´・ω・`) 「‥‥着いた‥‥ね」
( ^ω^) 「‥‥はいだお」
その建物は五年前、父が死んだ朝と何も変わらずそこにそびえ立っていた
ただ一つ違うのはそこにはもう誰も居ないことだけ‥‥
(´・ω・`) 「鍵は私が持っている。アイツにあい鍵を預かっていたからね
そら、開けるよ」
ギイイと音を立て大きな扉が開く。
224 名前: 1 ◆ndPkY/NmQ6
投稿日: 2005/11/04(金) 19:41:07 ID:N7NyqD0+O
家の中はあちこちに蜘蛛の巣がはっていて床には埃が積もったままになっ
ており、電気が点かないため昼間とはいえ少し薄暗かった
二人は少し迷ったが土足のまま玄関を上がり、埃まみれの廊下を奥に進んでいった
内藤は父の研究室に近付くにつれ、自分の鼓動が速くなっていくのを感じた
そして内藤が研究室のドアノブに手をかけようとした瞬間、それは突然起こった。
225 名前: 1 ◆ndPkY/NmQ6
投稿日: 2005/11/04(金) 19:42:30 ID:N7NyqD0+O
( ^ω^)「ぐあっ!!」
‥‥‥‥‥声<ノイズ>!!
感情のうねりが内藤の頭の中に入りこんでくる
しかも今回の声は以前の物より暗く、大きな物に感じられた
( ^ω^) (まだほかにあんな化け物がいるのかお‥‥それにこれは‥‥近いお!!)
(´・ω・`) 「どうした!?ホライゾン君!?」
様子がおかしい内藤にマスターは慌てて近寄った。
( ^ω^) 「また‥‥声が聞こえるんだお
だから‥‥僕は行かなければならないお」
(´・ω・`)「そうか‥‥私はここに残ってラボの中を調べてみることにするよ」
( ^ω^)「頼みますお」
(´・ω・`)「ホライゾン君!!!」
玄関の方へ駆けだしていく内藤の背中にマスターは叫んだ
(´・ω・`) 「‥‥無理はするなよ」
内藤は足を止め、振り返るとマスターの問いに無言でうなずき、また外へと駆けていった
(´・ω・`)「戻ってくるんだぞ‥‥絶対に‥‥」
マスターは祈るように一人呟いた
230 名前: 1 ◆ndPkY/NmQ6
投稿日: 2005/11/04(金) 20:10:53 ID:N7NyqD0+O
内藤は酷い悪路にもどかしさを感じながら急いでバイクを走らせた。
(; ^ω^) (急がなければ‥‥あんなヤツが人里に下りたら大変な事になるお)
声<ノイズ>の方向は轍すら無い更に山の奥から聞こえていた
内藤は何とかバイクを走らせ、やがて森の中でも少しひらけた場所に出た
( ^ω^) (ノイズはこの辺りから聞こえるお‥‥でも‥‥何も‥‥!!!!!!!)
突如、上から巨大な生き物の気配がした
危険を察知した内藤はバイクから転がるように飛び降りる
次の瞬間、バイクは真っ二つに両断されていた
内藤は襲いかかって来たモノの正体を確認しようとその方向に体を向き直した
そこには巨大な毛むくじゃらの怪人の背中がそびえ立っていた
235 名前: 1 ◆ndPkY/NmQ6
投稿日: 2005/11/04(金) 20:48:46 ID:N7NyqD0+O
茶色のまだら模様の両腕から伸びる鋭い爪は木漏れ日を浴び鈍い光を放
ち、長い尾はそれ自体が生きているかのように‥‥まるで獲物を求める蛇の様に奇妙な曲線を描き続けている。
頬まで裂けた口からは手のひらほどはあろうかと言う牙が飛び出し、その奥からは地鳴りの様な呻きが響いている
それは巨大な豹の怪人だった
( ^ω^) 「うわああああ!!!!!」
内藤は思わず悲鳴をあげた
怪人の凶々しさは以前戦ったそれとは比べ物にならないものだった
236 名前: 1 ◆ndPkY/NmQ6
投稿日: 2005/11/04(金) 20:49:34 ID:N7NyqD0+O
(; ^ω^)
(とにかく‥‥このままじゃどうしようもないお‥‥変身しなきゃだお!!)
怪人は内藤に向かい飛びかかってくる。
すんでのところで直撃を避ける事は出来たが、僅かに爪がかすった右腕から鮮血が飛んだ
状況を打破するため内藤は裂帛の気合いを込め、変身しようとした。
が、微かに光が漏れるだけで内藤の体に変化は起きなかった
(; ^ω^) (まさか‥‥前の戦いで使いきった光のエネルギーが元に戻っていないのかお!?)
260 名前: 1 ◆ndPkY/NmQ6
投稿日: 2005/11/05(土) 01:47:32 ID:T1cDsvANO
(; ^ω^) (兎に角‥‥時間を稼がなきゃだお‥‥)
内藤は自分の脚には自信があった。
しかし相手が豹の脚力を持っているなら話は別だ。所詮人間と豹、追いかけっこでかなう相手ではない。
何より自分が逃げ出してしまったらこの怪人は無差別に人を襲うかも知れない。
それだけは絶対に避けたかった
考え事をしている間も怪人は執拗に攻撃を仕掛けてくる
内藤は振り下ろされた爪の一撃をかろうじてかわす。
空振った腕は内藤の背後にあった木の幹を、僅かに火花を散らしながら人参のようにスライスしてみせた
内藤は短距離走のスタートで鍛えた反射神経をフルに生かし、次々と繰り出される攻撃を何とかかわしていく
しかし神経をすり減らすようなシビアな回避の連続に、内藤の体力も限界に近付きつつあった
(; ^ω^) (もう少し‥‥もう少しだお)
281 名前: 1 ◆ndPkY/NmQ6
投稿日: 2005/11/05(土) 10:54:30 ID:T1cDsvANO
だが岩の上に生えていたコケに足をとられ、内藤は体勢を崩してしまった
怪人はその僅かな隙を見逃さない。しなるような動きで一瞬で内藤に近付くと、その首をその大きな手で締め上げた。
(; ^ω^) 「ぐああっ!!!!」
鋭い爪が首に食い込み、内藤の首から鮮血が滴る。
だが痛みに苦しむ間もなく怪人は乱暴に内藤の体を巨木の幹に叩きつけるように放り投げた。
内藤の背中に凄まじい衝撃と痛みが走り、舞い散る青い葉と共に崩れるようにその場に膝をついた。
怪人は内藤の心臓にその長い爪を突き立てようと、ゆっくりと近づいてくる。
282 名前: 1 ◆ndPkY/NmQ6
投稿日: 2005/11/05(土) 10:58:10 ID:T1cDsvANO
だがその瞬間内藤の体から光の爆発が起きた
( ^ω^) 「うおおおおおお!!!!!」
内藤の体を中心に放射状に衝撃が走り、それに巻き上げられた落ち葉は津波のように舞踊る。
再び森の中に静寂が訪れた時、木漏れ日を浴びながらそこに有ったのは‥‥
‥‥赤く輝く大きな目、空に向け伸びる二本の触角、鈍く輝くシルバーと渋いグリーンの強化装甲。
微かな光を放ちながらゆっくりと立ち上がったそれは、既に光の戦士へと変身を遂げていた。
ヽ !
(=ЮωO)⊃
(⊃¥)
/ ヽ
283 名前: 1 ◆ndPkY/NmQ6
投稿日: 2005/11/05(土) 11:02:52 ID:T1cDsvANO
.∧_∧
(ΦwΦ) 「グルルルル!!!!」
怪人は威嚇する様なうめき声を発し今にも飛びかかろうという体勢を取った
それに備え内藤は静かに構えた
変身した内藤の脳の中にはまた怪人の心が流れてくる
だがそれは以前戦った怪人から感じたものと違い、畏れと嫉妬からくる強い憎しみに支配されていた
弾かれたように襲いかかって来た怪人を難なく避けた内藤だったが、怪人は巨木を蹴り体を反転させもう一度飛びかかって来た。
予期せぬ死角からの攻撃を完璧には避けきれず、内藤の肩に四本の爪痕が刻まれる
ヽ !
(= ЮωO) 「くっ!?」
高速で繰り出される正確なヒットアンドアウェー。
強固な外骨格で守られた内藤にとって、それは一撃ではたいしたダメージでは無かったがそこに爪痕が刻まれる度に少しずつではあるが、しかし
確実に体力を奪っていった。
286 名前: 1 ◆ndPkY/NmQ6
投稿日: 2005/11/05(土) 11:48:06 ID:T1cDsvANO
ヽ !
(= ЮωO) (とにかく‥‥‥どうにかして奴の懐に入らなければだお‥‥‥でも‥‥どうすれば‥‥)
怪人は一向に攻撃の手を休めようとしない。
体につけられた傷はどんどん増えていく
ヽ !
(= ЮωO) (一瞬でもいい‥‥‥ヤツに隙ができれば‥‥そうだお!!!)
内藤は動きを止め、力を利き腕である左腕に集中し始めた
その間も怪人は攻撃を続けている
ヽ !
(= ЮωO) (大丈夫‥‥まだ装甲はもつお‥‥多分この方法が通じるのは一度きり‥‥絶対に外せないお!!!)
握りしめられた内藤の左の拳からほのかに光が漏れる
怪人は内藤が動きを止めたのを見て好機と取ったのかそれまでより大きく溜めてから一気に跳躍した。
ヽ !
(= ЮωO) (今だお!!!)
それまで固く握られていた内藤の拳が怪人の目の前でバッと開かれた
ヽ !
(= ЮωO)つ 「ブーンフラッシュ!!」
内藤の叫び声と共に掌から激しい閃光が輝く。
予想だにしなかった反撃に、視界を失った怪人が驚愕の叫びをあげる
288 名前: 1 ◆ndPkY/NmQ6
投稿日: 2005/11/05(土) 12:25:14 ID:T1cDsvANO
.∧_∧
(ΦwΦ) 「グオオオオ」
ヽ !
(= ЮωO) 「トウ!!」
怯んで隙ができた怪人の顎に内藤は強烈なアッパーを打ち込む
怪人は内藤の間合いから離れるためにブンブンと腕を振り回すが、以前のキレを無くした当てずっぽうの攻撃が内藤にかする事すらなかった
ヽ !
(= ЮωO) 「セイヤッ!!!」
内藤のキックが怪人の腹部を直撃し、その衝撃に怪人はガクリと膝を付ついた。
ヽ !
(= ЮωO) 「はああああああ!!!!!」
内藤は怪人から少し距離を取ると残り全て光の力を解放し、その両脚に集中させた。
289 名前: 1 ◆ndPkY/NmQ6
投稿日: 2005/11/05(土) 12:26:53 ID:T1cDsvANO
怪人の視力が戻りつつあるのだろうか、鼻息を荒くして内藤を睨みつける
と爪をかざし、走り寄ってきた。
だがダメージのせいだろうか、そこには先程までの俊足は見る影もなかった。
ヽ !
(= ЮωO) 「トウ!!」
内藤は高く跳躍すると、怪人にめがけ凄まじい速さで光に輝くキックを繰り出した
ヽ !
(= ЮωO) 「ライダーキィィィッッック!!!!!!」
内藤のキックが怪人の巨体を貫く。
内藤が着地したのと同時に怪人の体は爆発し、光へと変わり、それはやがて青く萌える森の中へ溶けていった。
309 名前: 1 ◆ndPkY/NmQ6
投稿日: 2005/11/05(土) 17:50:13 ID:T1cDsvANO
力を使い果たし、内藤は元の姿に戻った
傷だらけの体にドッと疲労が押し寄せる
(; ^ω^) (ふー。今回のはヤバかったお。)
緊張の糸が切れ、内藤は木の幹にもたれ掛かるように座りこんだ
怪人の爪に切り裂かれてボロボロになった衣服が木の枝に引っかかったが、気にするのも面倒だった
取りあえずマスターの所へ戻らないと‥‥そんな事を思いながら立ち上がろうとしたその時だった。
(; ^ω^) 「う‥‥こ‥‥これは!?」
声<ノイズ>だ。
(; ^ω^) (怪人は倒したはずだお!!‥‥いや‥‥これは‥‥さっきのと違うノイズだお!!!!)
内藤は焦った。今の戦いで全てを使い果たしてしまったため、戦うどころか変身すら出来ない体だった。
最悪な事にその声の持ち主は既にすぐ近くまで来ていて、しかも内藤の方へ近づいて来る。
突然の事に内藤の頭は上手く働かない。そうこうしている間に声の持ち主はもうそこまで来ていた。
だがそこに現れたのは内藤の予想外のものだった。
311 名前: 1 ◆ndPkY/NmQ6
投稿日: 2005/11/05(土) 17:53:03 ID:T1cDsvANO
(; ^ω^) 「な‥‥‥‥」
内藤は言葉を失う。
声<ノイズ>の主は怪人などではない。ヒラヒラとした奇妙な白い衣服を纏った若い一人の女だった。
その女は一人言のように喋り出す。そしてそれはノイズなどではなく声帯から発せられる、間違い無く人間の声だった
謎の女「素晴らしいわ。さすが<完全なるヒト>。慣れない光の力をこうも使いこなすなんてね。」
内藤には何の事を言っているのか理解出来なかった
内藤は身構えながら言葉を投げつける様に言った
( ^ω^) 「お前は何者だお!?お前は人間なのかお!?」
謎の女 「ふふ、その質問はあなたの存在を否定するものよ?」
謎の女はクスッと笑い、平然としたまま答えた
314 名前: 1 ◆ndPkY/NmQ6
投稿日: 2005/11/05(土) 17:58:15 ID:T1cDsvANO
謎の女 「そう、私はヒト。いえ‥‥あなた程では無いにしろよりあるべ
き形に近いヒト‥‥と答えたほうが正しいかもね」
( ^ω^) 「どういう意味だお!?」
女はまたクスリと笑う
謎の女 「なかなか熱い人なのね、ますます気に入ったわ
やはり<完全なるヒト>の心は強く、美しい。あの御方もそう‥‥‥
それに比べてさっきのはてんで駄目ね。期待はずれだったわ」
( ^ω^) 「さっきの‥‥!!!あの怪人の事かお!?あの怪人はお前達が作ったのかお!?」
318 名前: 1 ◆ndPkY/NmQ6
投稿日: 2005/11/05(土) 18:22:31 ID:T1cDsvANO
謎の女 「作る?それは違うわ。私達はヒトという存在の中の失われた
ピースを与えるだけ。
私達はただの<導くもの>それ以上の役割は無いわ」
( ^ω^) 「<導くもの>?」
謎の女 「そう、そして私は貴方を私達の指導者として迎え入れたいの
貴方は選ばれたヒト‥‥その権利と義務があるわ
貴方なら私が今争うつもりが無いのが解るでしょう?」
確かに女から発せられるノイズはただただ内藤に対する畏怖と崇拝だった。逆に言えば変身すらしていない内藤にそれだけクリアな感情が解ると
言うことはそれだけ彼女の力が強大である事を示していた。
しかし彼女の言うことが少なくとも嘘では無いことは内藤にも理解できる。
それでも‥‥
( ^ω^) 「お断りだお!!僕はお前達の様な誰かを傷つける事を何とも思わない‥‥
悪党の目論見に手を貸すつもりはないお!!!!!」
322 名前: 1 ◆ndPkY/NmQ6
投稿日: 2005/11/05(土) 18:48:24 ID:T1cDsvANO
謎の女 「今はそう思うかもしれない。
でもいつか全てを知った時、貴方が私達と共にこの歪な世界を楽園へと帰す力になる事を信じているわ
そうなればきっとあの御方も喜んでくださる‥‥」
( ^ω^) 「あの御方‥‥?」
女のその端正な顔に今までとは違う、少し自嘲を含んだ笑みを浮かんだ。
謎の女 「皮肉なものね‥‥。
気が遠くなるような時間の中で待ち続けていた<完全なるヒト>の素質を持つものが同じ時代に二人も現れたのだから‥‥。」
女の周りの落ち葉がガサガサと音を立て彼女を包むように舞い上ってい。く
その隙間から微笑む女の唇が動くのが見えた。
謎の女 「それじゃあ私はそろそろおいとまさせて頂くわ。
次に会う時は良い返事を期待しているわね。」
( ^ω^) 「待つお!!お前にはまだ聞きたいことが‥‥。」
謎の女 「また会いましょう。」
内藤の問いに答えることも無く女の姿は一瞬にして消え去った。
立ち尽くす内藤の前には大きな謎と一筋の風だけが残されていた。
324 名前: 1 ◆ndPkY/NmQ6
投稿日: 2005/11/05(土) 19:06:02 ID:T1cDsvANO
内藤が家の前に戻ると、玄関の前でマスターがタバコを吸いながら内藤の
帰りを待っていてくれた。
マスターは内藤の無事を確認すると、いつもの静かな調子で話しかけた
(´・ω・`)y━~ 「やあ、帰りが遅いから心配していた所だよ‥‥
無事だったようだね、安心したよ」
( ^ω^) 「ええ‥‥すみませんだお。
バイクが破壊されてしまって‥‥それと‥‥」
(´・ω・`)y━~ 「‥‥何かあったようだね。詳しく話を聞かせてもらえるかい?」
内藤は起こった事を順番に話していった。
豹の姿をした怪人との戦い‥‥。その直後現れたノイズを発する人間の姿をした正体不明の女の事‥‥。
そして女が残した意味深な言葉の数々‥‥。
325 名前: 1 ◆ndPkY/NmQ6
投稿日: 2005/11/05(土) 19:23:39 ID:T1cDsvANO
無言で話を聞いていたマスターだったが内藤が一通り話を終えると静かに
口を開いた
(´・ω・`)y━~「‥‥どうやらまだ今の時点では解らない事の方が多いようだね‥‥。
だが取りあえず今回の一連の事件が例の伝説と関係がある事だけははっきりしたようだ‥‥。
私の方も色々と収穫はあったよ。これもその一つだ。君に渡しておこう」
(´・ω・`)つ二(:◎:)二
そう言うとマスターは手に持っていたタバコを口にくわえ、内藤に無骨な飾りの着いた一本のベルトを差し出した。
326 名前: 1 ◆ndPkY/NmQ6
投稿日: 2005/11/05(土) 19:35:28 ID:T1cDsvANO
( ^ω^)つ二(:◎:)ニ「これは‥‥何だお?」
内藤はそれを受け取りながら尋ねた
マスターはタバコの煙を大きく吸い込み、吐き出して答えた
(´・ω・`)y−~「ラボにあったレポートを見たがそれはどうやら君の中の光の力を自動的に貯え、増幅する装置らしい
それをベルトとして装着出来るよう私が改造したものだ
急ごしらえだったから少々野暮ったいデザインになってしまったが必ず君の力になるだろう」
マスターはそう言い、短くなった煙草の火をもみ消すと、吸い殻を自前の携帯灰皿の中に捨てた
(´・ω・`)「少なくとも今回のように光の力が足りなくて変身出来ないといった事態は避けられるだろう
それに光の力を使った技の威力も飛躍的に伸びるはずだ」
328 名前: 1 ◆ndPkY/NmQ6
投稿日: 2005/11/05(土) 20:00:24 ID:T1cDsvANO
内藤がそれを着けると、ベルトは吸い付くように内藤の体にフィットし
た。
まるでそれが体の一部であるような感覚すら覚える。
(´・ω・`)「おそらくその装置を見つけた事で君のお父さんの研究が正しかったことの裏付けにもなったのだろうね
ほかにも幾つか手掛かりとなりそうなものを見つけたんだが‥‥‥続きはラボの中にしようか。」
二人はまた土足のまま玄関を上がり研究室の中へと入って行った。
ラボの中に広がる風景は五年前に内藤が見たものとほとんど変わらる事なく、ただ、舞う埃が窓から差し込む光を受けて太い光の筋へと変えてい
た
それはまるで時が止まっているかの様な静けさだった。
349 名前: 1 ◆ndPkY/NmQ6
投稿日: 2005/11/05(土) 22:13:58 ID:T1cDsvANO
(´・ω・`)「これはアイツ‥‥君のお父さんが死の直前までつけてい
た日記だ
いや、日記というよりも‥‥もはや殴り書きのメモに近いものだが‥‥」
マスターはパラパラと日記帳をめくりあるページで手を止め、そのページを開いたまま内藤に手渡した。
(´・ω・`)「ここを見て欲しい。なかなか興味深い事が書いてある」
手渡された日記帳を内藤は覗きこんだ。そこにはお世辞にも綺麗とは呼べない字で書き込みがされてあった。
日付は七年前のものだ
199X年X月3日
調査に訪れた町で奇妙な噂を聞く
二人の失踪者 接点は無し 双方とも三日後に発見
彼らの証言→奇妙な空間の中に数え切れないほどの光の塊。→伝説との一致?
光の力が現世にでてくる場合と人が冥界へ迷い込む2つの可能性の浮上
二人のその後→一方は異常な怪力が身に付く。一週間後再び行方不明に
↓
一方は2日後にミイラ化して変死→光の力に耐えられなかった?
光の力を使いこなせるかは個人差がある可能性高
360 名前: 1 ◆ndPkY/NmQ6
投稿日: 2005/11/05(土) 22:47:10 ID:T1cDsvANO
(´・ω・`) 「力を扱う素質‥‥例の女の言葉と合致するとは思わな
いかい?」
内藤は目線を日記帳からマスターに向けた
(´・ω・`) 「確証はないが‥‥私が思うに怪人達は光の力を受けて変異した人間なのではないかな?」
( ^ω^) 「あれが‥‥人間?」
内藤は絶句した。
(´・ω・`)「そうだ。おそらく光の力を扱いきれず力が暴走し元に戻れなくなったのではないだろうか?」
( ^ω^)「そんな‥‥」
(´・ω・`)「恐らく例の女は完璧とはいかないまでもかなり高いレベルで光の力を扱えるために人の姿を保っていられるのだろう
‥‥‥君と同じようにね」
363 名前: 1 ◆ndPkY/NmQ6
投稿日: 2005/11/05(土) 23:20:27 ID:T1cDsvANO
(´・ω・`) 「さっきも言った通りこれは確証のない話‥‥まだ仮説
の段階に過ぎない」
( ^ω^) 「僕は‥‥どうしたらいいんだお‥‥?」
マスターは目をつぶり優しく声をかけた
(´ーωー`) 「与えられた力を何に使うかは‥‥君自身が決めることだ‥‥
ただホライゾン君‥‥自分が信じるものだけは見失わないでくれ」
( ^ω^) 「‥‥‥‥‥」
内藤は何も答える事が出来なかった。
自分の中で何かが崩れていく気がした。
369 名前: 1 ◆ndPkY/NmQ6
投稿日: 2005/11/05(土) 23:51:21 ID:T1cDsvANO
マスターのバイクに揺られ、バーボンハウスに戻って来た時には辺りは
すっかり暗くなっていた。
すぐさま帰ろう内藤をマスターは呼び止めた
(´・ω・`)つ□「ホライゾン君‥‥これを‥‥」
マスターは内藤に一枚のメモを差し出す。
そこには見慣れない女の名前と、部屋の番号と思われる数字が書いてあった
( ^ω^)「‥‥これは何だお?」
(´・ω・`)「それは君が病院を抜け出したあの日に君が助けた女の人だよ
君が目覚めた病院のその部屋に入院しているらしいんだ
もし君の心が落ち着いたら訪ねてあげて欲しい。何か手掛かりが手にはいるかもしれないしね」
449 名前: 1 ◆ndPkY/NmQ6
投稿日: 2005/11/06(日) 16:29:37 ID:kNlMseguO
「‥‥この事件でドキュン翔さんが死亡、また彼の友人である義屋留男さ
んも行方不明となっており、警察は義屋さんが事件にm‥‥」
つけっぱなしのテレビからは深夜のニュース番組が、街で起こったあの事件の続報を流し続けている
その明かりだけが時折点滅するように明るくなったり薄暗くなったりしながら部屋の中を照らす。
内藤は別にテレビに気を向けるでもなくそこに小さく座っていた。
( ^ω^) (僕は何のために戦ってきたんだお?怪人は僕と何も変わらない‥‥ただ僕は少し運が良かっただけ‥‥
‥‥そんな僕に怪人達と戦う権利があるのかお‥‥?)
内藤は泥沼のような終わらない自問の中にはまっていく。
最早自分が戦う理由すら失いかけていた
( ^ω^) (わからないお‥‥。僕はどうしたらいいんだお‥‥?教えてくれお‥‥誰か‥‥長岡‥‥)
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