第八話

485 名前: 1 ◆3mfWSeVk8Q [sage] 投稿日: 2005/11/19(土) 02:29:08 ID:dyb/XYK00

先生 「たぶんだが・・・・毒男はそれで私が処刑されるとおもったのだ ろうな・・・」
   「わたしが剣術指南役になるために、シャキンを始め、他の候補をつぶした」
   「そう、判断されると・・・な」

先生は、私もそうおもったさ、と付け加え

先生 「しかし、私は生き延びた。・・・幸か不幸か、な」
   「そして・・・毒男はその日以来、自身の家には戻らず、出奔したと聞いてな・・・」
   「私は、ショボン、お前を引き取ることでシャキンに対する詫びとした」
   「毒男に殺されることではなく、な・・・・」

490 名前:
1 ◆3mfWSeVk8Q [sage] 投稿日: 2005/11/19(土) 02:39:49 ID:dyb/XYK00

語り終えた先生は、ほんの少しの間にめっきり老け込んだように見えた
それは、語ることで、内から張り詰めた物が抜けたからだろうか

先生 「さて・・・・これが十年前の真相だ・・・・」
    「確かに、ブーンの言うとおり、私は真の意味で刀狩ではない」
    「だが、やはりその原因は私にあるのだよ・・・・」

頭を垂れる先生は、先ほどと同じ問いを、ショボンにしているように見える
その問いに、ショボンは、問いで返した

('・ω・`) 「先生・・・・一つだけ・・・・一つだけ、確認させてください」
先生 「なんだね・・・・?」
('・ω・`) 「先生は・・・父を、どのようにして、とどめを指したのですか?」

その質問は、ショボンと先生、二人の心を等しくえぐる物であった
先生は、それに答え、いや、応える

先生 「右手首を斬り飛ばした直後、左の小太刀が来る前に突き刺した」
    「今でもよく覚えているよ・・・・」
('・ω・`) 「・・・・向かってくる・・・・父を・・・ですか・・・?」
先生 「ああ・・・あそこで突きが外れていたら、私がやられていたよ・・・・」

494 名前:
1 ◆3mfWSeVk8Q [sage] 投稿日: 2005/11/19(土) 02:49:49 ID:dyb/XYK00

('・ω・`) 「そう・・・・ですか・・・・・・」
先生 「それだけで・・・・よいのかね・・・・・?」

先生はそう言うが、当時のことを思い出したせいだろう、顔色は悪かった
そんな先生を気遣うよう、遠慮するようにショボンは問いを続ける

('・ω・`) 「では、最後に一つ。 ・・・なぜ、ブーンを刀狩などと・・・?」
(;^ω^) 「・・・! ちょ・・・・なんだお!?それは!?」
ツン 「・・・・・・えっ!? お父様!? そ、そんなことをショボンに!?」

ショボンの言葉に、ツンとブーンが驚きの声をあげる

先生 「ああ、そうだ。・・・・・ふたりとも、私を恨んでくれて構わない・・・」
   「それだけのことを・・・したのだからな・・・・・・」
ツン・(;^ω^) 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

ツンとブーン。ふたりが驚きのあまり沈黙する。
ショボンはふたりの代わりを果たすように、もう一度、同じ問いを放った

('・ω・`) 「先生・・・全ては、語り終えてからにしましょう」
     「なぜ、そうしなければならなかったんです?」

498 名前:
1 ◆3mfWSeVk8Q [sage] 投稿日: 2005/11/19(土) 02:57:22 ID:dyb/XYK00

今から三月前のことであった
ショボンもブーンも、立派に成長し
シャキンの墓にもようやく行けるようになったある日
先生のもとに一通の手紙が届いた

先生 「・・・・・? なんだこれは・・・?」

この町に生まれ育った先生に、手紙を貰うほど遠方に住む知人などいない
いたとしても、手紙を書くなどということをするようには思えない人種だ
いぶかしみながらも、中を見れば誰かわかるであろうと思い、封を切った

先生 「・・・・・・・・!!! ・・・これは・・・・まさか・・・」

中身には、見覚えがあった
あの時、風呂敷の中にあったのと同じ匂い、つまり、

血文字で書かれた、毒男からの、手紙・・・・・

517 名前:
1 ◆3mfWSeVk8Q 投稿日: 2005/11/19(土) 03:53:25 ID:dyb/XYK00

先生 「その後、二月ほどお前達二人の腕を吟味した・・・・」

苦い顔の先生は、きっと、その時とその後の現在を後悔しているのだろう

先生 「ショボンはラウンジ流の癖が抜け切れず、どっちつかず・・・」
    「ブーンは、実力は十分だが、人を斬るには覚悟が足りなかった・・・」

だから、と先生は言葉を繋ぐ

先生 「ショボンはニュー速流に切り替えさせるために、ツンとの婚約を」
    「ブーンは人斬りの経験を積ませるために、刀狩を命じたのだ・・・・」
ツン 「・・・・・っ!  !?」
( ^ω^) 「・・・・・・・・」

先生のその言に、ツンが何か言いそうになるのをブーンが止めた。まだ、終わっていないと

先生 「結局、ショボンは変わらず、ブーンは人を斬らずに刀だけ持ち帰った・・・」

519 名前:
1 ◆3mfWSeVk8Q [sage] 投稿日: 2005/11/19(土) 03:54:38 ID:dyb/XYK00

先生は、いつかの林に来ていた。向かうは、いつかの日の大木
いつかの日のように木剣を構え、打ち込む

先生 「セィアっ!」

スカッ!!

しかし、いつかの日のような打撃音はしない。ただ、空を切る音がし

ず・・・・ずず・・・・・ずっ、どぉ・・・・・んんん・・・・・!!!

いつかの日の大木は、木剣の描いた軌道の通り、裂けて大地に突き刺さった
ニュー速流。その極みの剣を、先生は手にしていた
これが可能になったのは、シャキンを手にかけた、あの日からだった
それが何を意味するのか、何を必要とするのか、

先生 (必要なのは・・・腕ではなく・・・・覚悟・・・か・・・・)

先生は、そう理解した
そして思い起こす、手紙に書かれていた、禍々しい感情の現われを・・・・

520 名前:
1 ◆3mfWSeVk8Q 投稿日: 2005/11/19(土) 03:54:49 ID:dyb/XYK00

手紙には、小さくない紙に、一文字一文字がでかでかと、こう書かれてい た

『 よ う 。 大 切 な 物 は 育 っ た か い ?

  三 月 後 だ 。 そ れ ま で せ い ぜ い 、

  別 れ を 惜 し み な 。 は は は は は は ! ! 』


三月後に、毒男が来る
十年前、左腕が折れているのにも関わらず、道場主達を倒したあの男が
いや、あれから十年。今のやつは、おそらく、全盛期
今の衰えた私はもちろん、昔の私ですら敵うかどうかわからない

ならば・・・・・・

先生 (ブーンか・・・・・ショボン・・・・どちらだ・・・・・?)

自分の後継者と、親友の息子。どちらがより強いのか、知っておかなければ・・・・

521 名前:
1 ◆3mfWSeVk8Q [sage] 投稿日: 2005/11/19(土) 03:55:01 ID:dyb/XYK00

先生 「その後、二月ほどお前達二人の腕を吟味した・・・・」

苦い顔の先生は、きっと、その時とその後の現在を後悔しているのだろう

先生 「ショボンはラウンジ流の癖が抜け切れず、どっちつかず・・・」
    「ブーンは、実力は十分だが、人を斬るには覚悟が足りなかった・・・」

だから、と先生は言葉を繋ぐ

先生 「ショボンはニュー速流に切り替えさせるために、ツンとの婚約を」
    「ブーンは人斬りの経験を積ませるために、刀狩を命じたのだ・・・・」
ツン 「・・・・・っ!  !?」
( ^ω^) 「・・・・・・・・」

先生のその言に、ツンが何か言いそうになるのをブーンが止めた。まだ、終わっていないと

先生 「結局、ショボンは変わらず、ブーンは人を斬らずに刀だけ持ち帰った・・・」

524 名前:
1 ◆3mfWSeVk8Q [sage] 投稿日: 2005/11/19(土) 04:09:42 ID:dyb/XYK00

先生 「ゆえに・・・私は最後の手段をとった・・・・」
('・ω・`) 「それが・・・ブーンが刀狩だと言う・・・?」

頷きはそのまま謝罪へと繋がる

先生 「・・・・すまない・・・・だが、私には他に思いつかなかった・・・!!」
    「お前達、二人を闘わせる方法が・・・・・・・・!!」
('・ω・`) 「先生が、ご自分で腹を切ったのは・・・・・そのためですか?」
先生 「ああ。腹から血を流す私を見れば、必ずお前は激昂すると踏んでな・・・」
    「ブーンのことを刀狩だの何だのと言ったのは、より確実にするためだ・・・」
    「そして、お前達が争い、どちらかを殺し生き残れば、ニュー速の奥義に到る」
    「私はそう考えた・・・・・」
( ^ω^) 「では、あの時ぼくを斬る振りしたのはなんのためだお?」
先生 「あそこで、私をお前が斬ってくれれば、それでも良かったのだよ・・・」
    「どの道、奥義は完成する。そうなれば、お前はツンを守ってくれたろう?」
( ^ω^) 「・・・・・・・・・・・・」

ブーンの沈黙はそのまま答えであった

694 名前:
1 ◆3mfWSeVk8Q [sage] 投稿日: 2005/11/19(土) 22:59:59 ID:dyb/XYK00

先生は、いや、詭弁だな、と言い、悲しげに続ける

先生 「私は・・・・ただ死にたかっただけなのかもしれぬな・・・・」
    「ショボンに、刀狩の真相を打ち明けたのもそうだし・・・・」
    「私はな、ブーン・・・お前に憎まれるよう、あらゆる手を使ったつもりだ」
    「冷酷にあたり、非道な刀狩を命じ、理不尽な怒りをぶつけ、」
    「お前やツンの気持ちを知りながら、ツンとショボンのこんや・・・」
ツン 「ちょ・・・ちょっとストーップ!!」

ツンの気持ち・・・のあたりで、ツンが突然大声を出した

ツン 「・・・・いや・・・そのぉ・・・・/////」
   「ほ、ほらっ! お父様っ!? いい、今はそんな話をするべきではないと思うのっ!」

ドン、と座卓の上に片足を乗せ、ツンは、顔も真っ赤に興奮してまくし立てる

ツン 「過去の・・・・・・・事実の確認は、もう、おしまいっ!」
   「勝手に喧嘩吹っかけて、勝手ゆえに師匠に止められて」
   「勝手のために師匠をなくして、勝手な逆ギレかましたいじけ虫っ!」
   「毒男対策を含む、今後のことを話し合いましょっ!?」

695 名前:
1 ◆3mfWSeVk8Q [sage] 投稿日: 2005/11/19(土) 23:00:15 ID:dyb/XYK00

ツンの演説は、こき下ろされた毒男もそうだが
自分の父の死をあっさり一言で済まされたショボンに対しても、ひどいと言えた

('・ω・`) 「・・・・・あ・・あ!?・・・・ぐぶぅ!?」

なにか、何か、言おうとするショボンに、ツンは石を投げつける

ツン 「女々しい・・・! ・・・アンタ、それでも武士の息子なの・・・・・?」
   「果し合い、それの代理を買って出たのなら、覚悟は出来ていたのでは無いの?」
   「自身の命を捨て、ただ誇りだけを追求する覚悟がっ!」

一息の後、ツンの声音は興奮ではなく、青く澄み切った冷静の音を奏でる

ツン 「後からぐぢぐぢ言って・・・・・・・アンタは父のそれを、踏みにじる気?」

('・ω・`)・先生 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

その、ツンの突きつけた疑問に、ショボンと先生、二人は言葉を喪失した

697 名前:
1 ◆3mfWSeVk8Q [sage] 投稿日: 2005/11/19(土) 23:01:14 ID:dyb/XYK00

先生とショボンがそれぞれに、ツンの言葉に何かしらの感慨を抱いている 中
ツンの内心は、いい感じにアッパー系に入っていた

ツン (よっっっっしゃっ! お父様とショボンの口はこれで封じた!)
   (今、流れはアタシの手にある! このまま一気に・・・・ねじ伏せる!!)

色々とツッコミを入れたくなる思考だが、ツンは気にしない

ツン 「さて、簡単な問題から片付けていきましょうか」

どうやら議題は既に、今後の対応と言うことになっているらしい

ツン 「お父様の私的な独断に満ち溢れたアタシとショボンの婚約・・・・・」
   「そうね・・・・・みんながいる前でする話じゃないし、ショボン」
   「ちょっと二人っきりで話すわよ?」
(;^ω^) 「・・・・・・・・・・・・・・え!? ちょ!? おま!?」
ツン 「アンタは関係ないんだからっ! ココに残ってなさいっ!」

言うが早いか、ツンはショボンと共に、庭へと消えていった

703 名前:
1 ◆3mfWSeVk8Q [sage] 投稿日: 2005/11/19(土) 23:07:15 ID:dyb/XYK00

残れ、と命じられたブーンは言われたとおり、先生の部屋で膝を抱えてい た
関係ない、と言い切られたショックは大きかったのか、何やらぶつぶつ言っている

(;^ω^) 「・・・ショボンはいいやつだお? 腕もたつお? ナイスガイだお?」
      「・・・だからってぼくは関係ないって・・・でも・・・ああ・・・」

ブーンの周りは人魂の一つや二つでは効かないほど暗くなっていた
先生は、そんなブーンが見えていないのか、薬湯の湯飲みをもって呟く

先生 「・・・・私は・・・シャキンの覚悟を踏みにじっていたのかも・・・しれぬな・・・」
    「負うた子に教えられる・・・か・・・。 ・・・・なあ、ブーン?」
(;^ω^) 「・・でも、僕だって負けず劣らず・・・・はい!? 何ですかお!?」

先生は、土下座するように頭を下げた

先生 「すまない・・・・シャキンの覚悟どころか・・・私はお前の覚悟も・・・・」
    「・・・・・・・・・踏みにじった・・・・・・・・・!」

704 名前:
1 ◆3mfWSeVk8Q [sage] 投稿日: 2005/11/19(土) 23:08:02 ID:dyb/XYK00

(;^ω^) 「せ、先生! 頭を上げてくださいお!?」
先生 「いや・・・・こうさせてくれ・・・・・・」
    「私は、お前の覚悟を・・・私を救うという覚悟すら・・・踏みにじったのだ・・・」
(;^ω^) 「先生・・・・。 で、でも! でもですお!?」
      「それは、ツンお嬢様を守るため、やむをえなかったことだお・・・・?」

だったら、と、こちらの弁護をしようとするブーンの言葉を遮り

先生 「私は・・・・・・そうやって・・・そんな理由で・・・・娘を・・・・ツンを・・・」
    「あいつを道具扱いしたっ! あいつの思いも覚悟も踏みにじってっ!!」
(;^ω^) 「・・・・・・せん・・・・せい・・・・・」

先生の懺悔は、二人の間に、動きと言う物すべてを奪った
どのくらいそうしていたのであろうか。ひどく永く感じた不動の時間を破り
先生は顔をあげ、こう言った

先生 「だがな、ブーン、安心しろ・・・?・・・ツンの・・・・・娘の覚悟は・・・・」
    「私ごときが・・・・踏み潰せるものでは・・・・・・ないぞ・・・?」

706 名前:
1 ◆3mfWSeVk8Q [sage] 投稿日: 2005/11/19(土) 23:20:06 ID:dyb/XYK00

庭に出たツンとショボンは真逆であった
伸びをしながらゆったりと庭を歩く
対してショボンは、庭の土の上に座り、全身を緊張させていた

ツン 「さっきはごめんね? お父上のこと、あんなあっさり切り捨てて」
('・ω・`) 「いえ・・・・・お嬢様の仰るとおりです・・・」
     「僕は、父上の仇などと、父上の覚悟に泥を塗る行為を糧に」
     「今まで生きてきました。今では、重荷が取れたような気分です・・・」

言って頭を下げるショボンは、奇しくも先生と同じ所作
しかし目の前にいるのは、ブーンではなく、ツンであった・・・

グリっ!

('・ω・`) 「・・・・・!???」

ショボンは、下げた頭の上。後頭部に何かが押し付けられる感触を得た
それが何かは、すぐにわかる・・・・・・

ツン 「悪いわね、ショボン? これがアタシの、アナタに対する態度よ?」

それはツンの雪駄であった

708 名前:
1 ◆3mfWSeVk8Q [sage] 投稿日: 2005/11/19(土) 23:25:26 ID:dyb/XYK00

('・ω・`) 「おじょうさま・・・? ・・・一体何を・・・?」
ツン 「アンタの頭を踏んでいる。現在進行形でね?」
('・ω・`) 「いえ! そうではなく!!」
ツン 「理由は簡単。アンタはアタシを許しても、アタシはアンタを許してないのよ?」

グリリッ! と、雪駄に徐々に体重がかけられ、同じようにショボンの顔は地面にめり込む
そのままの姿勢で、ショボンは問う

('・ω・`) 「それはどういう・・・・!」

ツンの答えは明確であった

ツン 「アタシの罪は、アナタのお父上の死への侮辱」
   「アンタの罪は、ブーンの顔を傷つけたことよ・・・・!!」

710 名前:
1 ◆3mfWSeVk8Q [sage] 投稿日: 2005/11/19(土) 23:33:35 ID:dyb/XYK00

はっきりと告げると、ツンの行為もはっきりとする
足にかかる体重は次第に増大し、そのままショボンの頭を踏み砕こうとした
流石に、踏み砕かれているショボンではない
身体をねじり、頭がこすれるのも厭わずに引き抜く

ツン 「これのどこが、婚約についての話し合い? と、いいたそうね?」
('・ω・`) 「・・・・まともな返答が返るなら、そう、問いますが?」
ツン 「答えはさっきので十分じゃないの?」
('・ω・`) 「・・・・・意味がわかりませぬ・・・・・・!」

語気を強めるショボンだが、ツンはそれを気にも留めない

ツン 「アタシは、ブーンと約束したの・・・・」

ツンは語る。一月前の、旅立つブーンとのやりとりを

717 名前:
1 ◆3mfWSeVk8Q [sage] 投稿日: 2005/11/19(土) 23:45:29 ID:dyb/XYK00

ブーンは旅立つ直前、悩んでいた

自分は、ツンのために、いや自分のために、人を斬れるのか・・・・?

悩み苦しんでいた

ツン 「武者修行・・・ね。 うん・・・・・いい、ことだと思うわ?」
(;^ω^) 「でも・・・・ぼくは不安なんだお・・・・・?」
ツン 「・・・・・・・・・・・何が?」
(;^ω^) 「ぼくは・・・・人を斬れるのかどうか・・・不安なんだお・・・」

吐露された内心は、不安、等と言うものではなかった
それは既に強迫観念。人を斬れるか、ではなく、人を斬らねばならない
心のどこかで、そう、自分に命じている
長い付き合いのツンには、そんな常ならぬブーンの気持ちが、手に取るように理解できた

だから、ブーンのもっとも望む言葉をかけてあげた

ツン 「ばっかじゃないの? そんなの、アンタの好きにすればいいじゃない?」

719 名前:
1 ◆3mfWSeVk8Q [sage] 投稿日: 2005/11/19(土) 23:59:10 ID:dyb/XYK00

望んでいた、心の底から欲していた言葉に、ブーンは戸惑う

(;^ω^) 「・・・・は、果し合いになったら・・・・・・・どの道・・・」・
      「好きも嫌いも・・・ないお・・・・・・・」

怯えるように、その場面でも想像したのか震えるブーン
ツンはそれを優しく抱きとめず、突き放す

ツン 「はぁ・・・・・・? 果し合いに、『相手を斬り殺さねばならぬ』」
   「・・・・なんてルールでもあるの? それは初耳だったわ」
   「『果し合い』だったら、文字通り、己の望みを『果たし』た方の勝ちじゃないの?」
   「変な縛りをつけて、煮詰まらないでよっ! うっとおしい・・・」
( ^ω^) 「・・・・・・そうだお・・・ああ・・・そうだお・・・!」
      「でも! ・・・・・・斬らねばならぬ日もいつか・・・・・・!」

斬らねば、君を守れなくなる日が・・・・

ツン 「来ないわよ?」
(;^ω^) 「・・・・・え?」

きっぱりと言い放つツン

ツン 「アンタが斬りたがらぬ限り、そんな日は、絶対に来ないのよ?」

720 名前:
1 ◆3mfWSeVk8Q [sage] 投稿日: 2005/11/20(日) 00:11:04 ID:8/TJ51dX0

ドクン・・・・ドクン・・・・ドクン・・・・・
鼓動が大きく感じる。愛する人の、断定的で絶対的な、否定
それがあれば、何でもできる気がする。不可能はない気がする
だが、口をつくのは否定の言葉

(;^ω^) 「ぼくには・・・・そんな大それたこと・・・断言、出来ないお・・・・!」

確かに。斬りたがらぬと言って、斬らねばならぬ日が消えることは無い
だが、

ツン 「断言ができないんなら、それに最大限、近づきなさいよっ!?」
(;^ω^) 「・・・・・・・・・・・!!」

ツンは強気に言い放つ

ツン 「アナタならできる・・・・・私に、そう信じさせてはくれない?」
(;^ω^) 「ツン・・・・・・」

ドクン・・・・ドクン・・・・ドクン・・・・

鼓動はヒートアップする

724 名前:
1 ◆3mfWSeVk8Q [sage] 投稿日: 2005/11/20(日) 00:21:59 ID:8/TJ51dX0

( ^ω^) 「わかったお」
ツン 「ブーン・・・」
( ^ω^) 「たとえ、この身がどうなろうと、君の信頼は裏切らないお!!」

もう、迷いは無い
自分の信念を信じる人がいる。ならば自分は最大限、その信頼に応えるのみ
力強く、魂を込め、ブーンは言った。 ・・・・・・だが


ツン 「ちょっと・・・・・? そんなことはアタシがゆるさないわよ・・・・!」

ツンは、その決意を真っ向から叩き斬った

(;^ω^) 「え・・・? え? え? な、なな、何がだお!?」
ツン 「アンタのその身体をどうこうする権利はアンタには無いのっ!」
  「アンタのその身体を・・・・・どうこうしていいのは私だけだからよっ!」

聞きようによっては、まるっきり愛の告白のような言葉を
ツンは胸を張って、言い切った

728 名前:
1 ◆3mfWSeVk8Q [sage] 投稿日: 2005/11/20(日) 00:35:01 ID:8/TJ51dX0

ツン 「昔、約束したわよね? アタシはアナタを心配しつづけるって」
   「そして、アタシを一番に心配するって、ね?」

ツンの言葉に、ブーンは頷く

ツン 「だからアナタが傷つくと、アタシはそれを心配する・・・・」
   「そんなことは、許可しないわ」

ツンの視線と言葉には、それぞれすさまじいまでのエゴと思いやりが封じられていた
気迫に押され、ブーンは思わず問う

(;^ω^) 「もし、ぼくが傷ついたとしたら・・・・・どうするお?」

ツンはにやりと笑い、まるで蛇のような視線をブーンに向けた

ツン 「目には目を。歯には歯を。 等しい傷を持って加害者に復讐をするわ・・・!」
   「アタシに、そんなことをさせたいの・・・・・・・?」
( ^ω^) 「ぜ、絶対、そんなことはさせないお!!」

ツンの異様な視線に、即答するブーン
それに満足そうに笑い、今度は朗らかな少女の笑顔で

ツン 「うん! やくそくは、守りなさいよねっ!?」
   「アタシのところへ無傷で帰ってきなさい!」

803 名前: 1・閑話休題 ◆3mfWSeVk8Q [sage] 投稿日: 2005/11/20(日) 16:09:49 ID:m6f8VM080

ツン 「そして・・・・ブーンは約束どおり、無傷で帰って来た わ・・・」
('・ω・`) 「・・・・・・・・・・・・・・」

呟くツンの表情は、あふれる嬉しさを押さえ込んだ、無表情
続き浮かぶのは、とどまらぬ怒りを押さえ込んだ、無表情
傍目にはわからぬ内面の変化。ショボンは確かにそれを感じていた

ツン 「でも・・・・アナタは、そのブーンの歯を叩き折った・・・・・」
   「約束を守ったブーンに報いるため・・・アタシも、約束を守る」
('・ω・`) 「・・・・・お嬢様」

そう言ってツンは手中に砂利を握りこみ、ショボンめがけて
その拳を走らせた

804 名前:
1 ◆3mfWSeVk8Q [sage] 投稿日: 2005/11/20(日) 16:10:44 ID:m6f8VM080

ツン 「そして・・・・ブーンは約束どおり、無傷で帰って来た わ・・・」
('・ω・`) 「・・・・・・・・・・・・・・」

呟くツンの表情は、あふれる嬉しさを押さえ込んだ、無表情
続き浮かぶのは、とどまらぬ怒りを押さえ込んだ、無表情
傍目にはわからぬ内面の変化。ショボンは確かにそれを感じていた

ツン 「でも・・・・アナタは、そのブーンの歯を叩き折った・・・・・」
   「約束を守ったブーンに報いるため・・・アタシも、約束を守る」
('・ω・`) 「・・・・・お嬢様」

そう言ってツンは手中に砂利を握りこみ、ショボンめがけて
その拳を走らせた

805 名前:
1 ◆3mfWSeVk8Q [sage] 投稿日: 2005/11/20(日) 16:11:01 ID:m6f8VM080

拳は、ショボンの眼前で止まった

('・ω・`) 「・・・・・約束を、果たさないでよろしいのですか・・・・」

まったく動じていないショボンに、ツンは苦笑し、ええ、と応える

ツン 「少し・・・・自分に正直に生きようと思ってね・・・・?」
   「今、アナタの歯を折れば、ブーンはアナタを心配するでしょうね」
   
一呼吸の間が空き

ツン 「アタシは、そんなのは絶対にいや」
   「もう、二度とブーンにアンタの心配なんかさせたくないのよね・・・!」

わかる?、とツンは問いかけ

ツン 「・・・・・・・・・・これが答えよ」
   「アタシは、ブーンの為なら婚約者の歯を折ることも躊躇わない」
   「ブーンの為なら、それをやめることにも逡巡は持たないわ」

ツン 「アタシは、アナタが嫌いで・・・・・ブーンのことを、愛しているわ」

806 名前:
1 ◆3mfWSeVk8Q [sage] 投稿日: 2005/11/20(日) 16:11:48 ID:m6f8VM080

キッパリとしたツンの告白は、酷く心地よかった
眼に迷いは無く、言葉に躊躇は無く、行う動きには刹那の逡巡も無い
ショボンは、我知らず・・・・・笑った

('・ω・`) 「・・・く、くくく・・・あははははははははっははwwww」
ツン 「なっ! な、なな、な何よっ!? ふ、ふふ、ふんっ!」
   「ぶ・・・・・ブーンには・・・・なな、内緒なんだからねっ!?」
('・ω・`) 「え、ええwwもちろんww ・・・・それはツンさんの口から言って下さいw」

なっ! と顔を真っ赤にするツンが、何事か言う前に、

('・ω・`) 「ちょうどよかった・・・・僕もツンさんに、言いたい事があったんですよ・・・」

何時の間にか、ショボンはツンのことをお嬢様と呼ばなくなっていた

('・ω・`) 「僕は、ブーンを一人で死なせるぐらいなら、僕が殺す」
     「そして、その罪を背負い、一生苦しむ覚悟がある」
     「そうならないよう・・・・ブーンを守る覚悟も持っています」

('・ω・`) 「僕は、ツンさんの為ではなく・・・・ブーンの為にここにいます」

807 名前:
1 ◆3mfWSeVk8Q [sage] 投稿日: 2005/11/20(日) 16:12:40 ID:m6f8VM080

ツンはショボンの告白に、薄く笑う

ツン 「あら・・・・? アタシみたいな美人と婚約できる機会、もう無いわよ?」

ツンのわざとらしい言い草に、ショボンも薄く笑う

('・ω・`) 「ツンさんこそ・・・僕みたいないい男と婚約できる機会、そうはないですよ」

お互いに笑い

ツン 「冗談w ・・・・・・ブーンの方が遥かにいい男だと思わない?」
('・ω・`) 「ええw 僕もそうじゃないかと思いますね?」
ツン 「ずいぶんと、気が会うじゃない?」
('・ω・`) 「僕もアナタもブーンが大好き・・・・そりゃ気が合いますよ?」
ツン 「それじゃ、アタシ達は似た物夫婦になれたのかもね?」
('・ω・`) 「冗談w ・・・・・・お互いが愛し合えない夫婦は不幸ですよ?」

笑い、笑い、大いに笑い、二人は声を揃える。

なら、と

ツン・('・ω・`) 「婚約は、破棄だっ!」

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